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弘中さん


お母ちゃん、照美がやったる!

 会の発足以来、弘中さんの生活は一変した。当初、相談用のホットラインとして公開された3本の携帯電話が鳴り続けたのである。
「息子の借金で米と塩だけの食事……。息子は家具も担保に入れてしまってる……」
「最期に人と話したかった。死のうとしている自分に友だちも周囲も誰も気づかない……」
 電話の向こうから届けられる悲鳴に似た声。意を決して受話器を取ったであろう相手に、弘中さんは「よくお電話くださいましたね。勇気がいったでしょう」と必ず言う。その数は、この2年半で4000件を超えた。その約半分はリピーターで、約1割が定期的なフォローが必要な人。毎日電話をして来る人もいる。相談者は兵庫県、大阪府が中心だが、他は全国から。今も多い時で1日20本はかかってくる。
 
 受話器の向こうから訴えてくるのは、切羽詰まった声ばかりである。
 梅雨期、電話からは雨音とともに、つぶやくような声が聞こえてきた。「もう生きとってもしょうがない…」。5階ビルの屋上で柵に手をかけた瞬間だという中年男性に、「とにかく雨のかからない所へ」と安全な場所に誘導。自殺を決行しようとしている人に説得など無用だ。相手から巧みに居場所を聞き出し、同地域にある「被害者の会」の関係者に連絡を取り、現場に駆けつけてもらった。そういう場では単に自殺を止めるのではなく、「とにかく一緒に考えよう」と声をかけることが鉄則だという。思いのほか素直に従ってもらえた例だが、翌日には関係者とともに生活保護の申請に行き、その翌日には仕事も見つかった。
「人間って回復力があると思う。体の傷が癒えるように心の傷も癒えていく時が必ずある。その時間が速いか遅いかかは個人差がありますが……。この場合はネットワークのありがたさを痛感しました」と弘中さん。こうしたネットワークが全国に広がることも、自殺予防には大切な要素となる。
 このところ、会にも厳しい雇用情勢を反映した中高年男性からの相談が増えている。リストラや賃金カットが引き金になり多重債務に陥るケースが多いのだ。
「『男は頑張って当然。弱音を吐いてはいけない』という意識が根強いせいか、相談することに抵抗感の強い男性は、一人で悩んで孤立し、糸をピーンと張りつめた状態で電話をして来るケースが目立ちます。『大丈夫ですよ』と言ったら、ホッとされるのか『ワッー』と泣き出される。今まで妻にさえ言えず、そのまま死のうと思っていたいう方が圧倒的に多いんです」
 減給になっても妻には伝えず、その補填に「ちょっと銀行へ」という感覚で消費者金融に手を出す人が多い。「妻に言えば離婚される」など、マイナス思考の男性がほとんど。弘中さんは「夫婦関係が試される時なんじゃないかな」と投げかける。「誰かに話せば、必ず解決の糸口はみつかるはずです」。

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