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お母ちゃん、照美がやったる!

 母が亡くなった翌年の05年の6月、大手消費者金融業者から1通の手紙が届いた。母には50万円ほどの借り入れがあり、消費者信用団体生命保険にも加入していて、その保険金で残金を処理するので、死亡診断書か死体検案書を提出してほしいという内容だった。
「なんで保険にまで入らされてんの?」。多重債務に関わってきた人間として、腑に落ちない内容だ。弘中さんは、すぐに司法書士事務所で補助者として働く夫に連絡を取った。夫も疑問に感じ、専門の弁護士らに相談。消費者金融から送られて来た母の取引履歴をもとに、利息制限法制限金利で引き直し計算をしてみると、借金は残っておらず少し過払いになっていた。生命保険50万円が下りると二重取りになる仕組みだった。
弘中さん「当時の私の精神状態では、もう関わりたくないという思いが強かった。でも、おかしいことはおかしいと言わなあかんと思ったんです。借り入れの時にほとんどの人が、説明を受けずに生命保険に入らされてる。弁護士の先生方と相談して訴えを起こすことに決めました。仏前で母に報告したら怒りが込み上げてきて、『お母ちゃん、照美がやったる!』って」
 弁護士らと準備を進め、06年3月、大手消費者金融業者と大手生命保険会社を相手に、その違法性や慰謝料を求め提訴した。それ以来、多くの人前で話す機会が増えた弘中さん。「命を担保に! 悔やみきれぬ娘」といった新聞報道を機に、各社のテレビ番組でも取り上げられるようになった。
 当初は自殺への偏見があり、いずれ就職や結婚をするだろう息子の将来を考え、顔も名前も伏せて活動していたが、息子に諭され、街角で堂々と募金活動をしていた「あしなが育英会」の自死遺児たちの姿に力づけられ、全国各地での講演活動も始めるようになった。
「たくさんの方に会うようになって驚いたのが、身内を自殺で亡くしながら、何十年も人に言えなかった方がいっぱいいらっしゃったこと。多重債務も、自殺も、この日本ではタブー。年間の自殺者が3万人という状態が11年続いてて、1人の自殺者で最低でも5人の遺族が悲しむという結果が出ているのに、その悲しみをだれも語れない世の中なんです」
 その頃からだ。「多重債務が原因で自死された遺族の会を作れないものか」と思うようになった。自殺予防に加え、遺族のメンタルケアもサポートできる会を、である。その想いを知り合いの弁護士や司法書士に伝え、支援者の厚い支えのもとで06年準備会が発足し、07年3月「多重債務による自死をなくす会」が設立された。
 代表幹事は弘中照美、夫が事務局長に。副代表、顧問、事務局次長、理事等に全国の弁護士、司法書士らが名前を連ねている。
 会設立に向けてあわただしい日々を送るなかで、嬉しいニュースが舞い込んできた。弘中さんの提訴がもととなって、消費者金融が一斉に団体生命保険から撤退し始めたのだ。そして、06年12月に改正となった「賃金業法」で、借り手の自殺を対象として生命保険契約が禁止され、上限金利も年29,2%から、利息制限法の年15〜20%に引き下げられたのである。

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