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高齢者問題を考える

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 介護する側の利便性だけを考えた「介護用品」から、介護される側の生きる気力を引き出す「生活用品」へ。これまでの介護用品のあり方を見直し、新しいかたちの高齢者用品ショップを展開するなど、介護・福祉用具の提案では草分け的存在の浜田きよ子さん(52歳)。全国各地での講演をはじめ、用品売場のコーディネートなど多忙な日々ですが、拠点は京都・西陣にある「高齢生活研究所」での相談活動。そんな浜田さんに、身体が不自由になっても自分らしい「生きるかたち」を取り戻すための「高齢者用品」や「介護のあり方」について、2回にわたって語っていただきます。

いい道具を上手に使えば、その人らしく「生きるかたち」をもう一度築いていける 高齢生活研究所 浜田きよ子さん

 高齢者用品に関心をもったのは、20年ほど前の母の介護がきっかけでした。
 それまで私は子どもを育てながら、不登校や勉強が苦手な子どもたちの小さな塾を開いていましたが、長く患っていた母の糖尿病が悪化。入退院を繰り返すようになりました。母は入院しても足腰はまだしっかりしていて、自分でベットから下りてトイレに行けていたのに、ある日、上手く下りられなくて、ひざを強くぶつけてしまった。白内障がすすんで目が見えなくなってしまっていたんです。それで医師や看護婦さんからオムツを勧められ、本人はとても嫌がってたのに使用することにしたところ、坂道を転げ落ちるように弱ってしまい、1カ月ほどで亡くなってしまった。69歳でした。
 当時の看護は、安静にして早く良くなる日をみんなで築いていこうという考えが主流。でも、母を亡くして「あれで良かったのか」という想いばかりが膨らんでいきました。もっと本人が生きていたいと思えるような状況を作ることが大事だったのに、オムツを使うことで、生きる気力を失なわせて亡くなってしまったのではないかと思うようになったのです。

高齢者が自分らしく暮らせる生活用品があっていい

 それまでの介護用品は、介護する側の利便性を考えた用品がほとんど。今後、高齢者がどんどん増えて行く中で、老いの衰えを補てんしてくれたり、年を取っても安心できて積極的に生きられる用具があるんじゃないか、介護される側の視点に立った介護や介護用品のことをきちんと考え、発言していかなければいけないのではないかと思うようになりました。
 まだ介護用具も少ない時期でしたが、ちょうどその頃、オムツのファッションショーに出会いましてね。見た目は普通のパンツでも、尿もれパットが付いていたり、車椅子に乗ったままで自分でパット交換ができる失禁パンツなど、使う側に立った用品も探せばあることに気づきました。
 また一方で、障害児教育が専門のつれあいから三好春樹さん(「生活とリハビリ研究所」主宰)を紹介され、彼の「老いのとらえ方」に共感しました。「寝たきりといわれる高齢者の9割が座ることができ、座れればオムツをしなくてもベット横のポータブルトイレが利用できるし、食事も座ってできて、生活が広がっていく」という発想です。そのお陰で、私が取り組もうとしているのは、介護用品だけではなく、高齢者の暮らしに役立つ生活用品の使い方を伝えていくことだという気持ちの整理もできました。

お仕着せの介護用品から人にあわせた生活用品へ

手書きの看板が浜田さんらしい「高齢生活研究所」。
手書きの看板が浜田さんらしい「高齢生活研究所」。高齢者用品ショップ「おたっしゃ本舗」の奥にある。

 それからはいろんな展示会を観に行ったり、カタログを集めたり。関係者何人かに声をかけて、気にいった用品を取り寄せては、ひとつひとつを吟味しながら品揃えをしていくという感じでした。シルバー世代に便利な用品を提供できればと、西陣で帯問屋をしていた父の住まいの一部を借りて店をオープンしたのが1988年。お陰で店は繁盛して、手狭になったことから別の場所に移転。その間に3回も脳硬塞を起こしながら独り住まいだった父の様子も気になるようになり、父のそばでじっくりと福祉用具の相談をやてみようと店の代表を辞め、1995年から父の家で「高齢生活研究所」を開設したのです。
 その頃はまだ用具の適応マニュアルもなく、道具に関心をもっても理念的な部分でしか分からなかったのが、厚生労働省の指定法人で福祉用具の開発普及に努めているテクノエイド協会のマニュアル作りに関わるようになり、身体から見た用具の選び方やその役割、具体的な使い方など、随分勉強させてもらいました。それまでソフトだけがぼんやりあったのが、ハードも明確になったという感じです。
 実際に福祉用具も随分改良されてきました。たとえば、ポータブルトイレひとつを取っても、以前は座面の素材は柔らかいほうが当然いいのに板だったり、アームレスト(ひじかけ)がないものが多かったり。座面の高さ調節もいっさいできず、立ち上がる時に足も引けないものだったのですが、最近では個人の状況に合わせて調整ができて、その人の身体状況が変化しても使い続けられるものに変わってきています。

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