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どんな子どもも「生きる力」をもっている

 日雇い労働者のまちとして知られる、大阪・釜ヶ崎。ドヤと呼ばれる簡易宿泊所が立ち並び、作業服姿の男性たちが行き来するまちの真ん中に「こどもの里」がある。1978年、「釜ヶ崎の子どもたちに健全で自由な遊び場を」と、フランシスコ会の老人センター「ふるさとの家」の一室で学童保育所「子どもの広場」として始まった。1980年に「守護の天使の姉妹修道会」が引き継ぎ、現在の場所に移転した。その頃から荘保さんと子どもたちとの関わりが始まる。

 激しいまでの遊びの裏に見え隠れしていたのは、生活そのものの不安定さだった。子どもと関わるということは、子どもが生きる、そのことへの手助けなのだと気付かされる。それはまた、日雇い労働という不安定な就労からくる経済的不安や病気、離婚など保護者たちが抱えるさまざまな問題でもあった。楽しく遊ぶだけでなく、住まいや食事の確保から基本的な生活習慣を身につけることまで、子どもたちを幅広くサポートする必要を教えられた。

 そして次第に、借金や家庭内暴力などから逃げてきた親子の緊急避難場所という役割も担うように。1996年に大阪市の「子どもの家事業」の認可を受け、2000年には里親の認定、さらに2001年には大阪市家庭養護寮の指定を受ける。現在は姉妹修道会から引き継いだ宗教法人「カトリック大阪大司教区」に所属しながら、大阪市からの補助金やバザー、カンパなどによる独立採算で運営されている。


切実な人に届かない「福祉」

―――あかちゃんと呼べそうな子から高校生まで、幅広い年齢の子どもがいますね。スタッフと子どもの人数はそれぞれ何人ですか?

 現在、スタッフは4名です。2005年度の登録児童数は108名で、うち障がい児・者が21名です。「児童」ですから基本は0歳から18歳ですが、引き続き来所を希望する障がい者はその限りではありません。現在の最高年齢は26歳です。いろんな形でのボランティアの手助けによって活動できています。

 放課後や休日を過ごしに来る子もいるし、ここで一時的に生活している子もいます。どんな子も受け入れるのが基本方針です。

―――具体的にはどんな事情をもった子どもたちがいるのですか?

 父親の暴力や借金、性虐待や外国人の親子・・・さまざまですね。特にフィリピン人の母子が突然やってくるというケースが何度かありました。「あそこに行けば何とかなる」と口コミで伝わっているみたいです。出産1ヶ月前の人が幼い子を連れて、暴力をふるう夫から逃げてきたことがありました。たいていパスポートを取り上げられているので、身動きがとれないんです。そんな場合は弁護士を紹介します。そして落ち着くまで親子でここに住み、自立に向けて仕事を探してもらいます。もちろん日本人でも同じようなケースはあります。

―――いずれにしても仕事や住まいを見つけて自立されていくわけですが、もともとしんどい状況にあった人が自立するには難しい問題があるのではないでしょうか。

 日本人の場合、ほとんどが生活保護にかかることから始まります。だけど日本の生活保護は住民票がなければ認められません。「親子で野宿している」という状況が想定されていないわけです。だからとりあえずアパートを確保してから、区役所で相談をすることになります。そのためにまず頭金を立て替えなければなりません。

―――「こどもの里」がある釜が崎は、「日雇い労働者のまち」ですね。仕事が安定しない環境での子育ては大変でしょうね。

 ええ。父子家庭も少なくありません。ところが、母子家庭に比べて父子家庭に対する支援がないんです。女は子育てのために働けないと認められても、男が子育てのために働けないとは認められていない日本社会の一般通念の結果です。でも仕事が安定しなかったり、肉体労働で体を壊したりする人もいます。また、父親だけでは地域や保育所、学校との関わりがもちにくく、孤立しがちです。結果的にネグレクト(育児放棄)の状態になってしまう。

 国が「男性も一緒に子育てを」とキャンペーンをしたことがありますよね。それなら父子寮をつくるとか、経済力はあっても生活面で足りない部分は支援するとか、本当に困っている父親にも目を向けてほしい。

 今、仕事を失って野宿をしている父子が一緒に住める場所がないんです。父親に生活力がないと、すぐ親子が分離されてしまう。どうしても一緒にいたいなら、親子で野宿を続けるしかありません。それだけでなく、家族寮もありません。「どんな逆境でも親子いっしょに生活したい」と思っていても、親子を緊急に保護する場がまったくないのです。そのため、仕方なく家族で野宿を強いられることになります。

 
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