
女性のアルコール依存症が増えるなか、自助グループ「アルコール依存症の妻をもつ夫の会in関西」が2年前に発足した。男性患者のための「断酒会」は各地にあるが、女性患者を支援する男性の会は全国でも珍しい存在である。代表は小林隆明さん(54歳)。「体験を分かち合い、新たな生き方を構築していこう」と呼びかけているものの、同じ悩みを抱えながらも声をあげる男性はまだ少ないようだ。
小林さんが、新阿武山病院(高槻市)主催の「アルコール依存症の妻をもつ夫の集い」に参加したのは3年前。夫の会として日本初といわれるこの集いで、これまでなかなか悩みを分かち合えなかった夫たちが集まり、体験を語り合うことの大切さを痛感した。こうした会を地域にも広げていき、社会的な啓発活動にもつながればと2001年、有志3人でスタートしたのが「アルコール依存症の妻をもつ夫の会in関西」だ。
「アルコール依存症は病気です」
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アルコール依存症の妻をもつ夫の集い(新阿武山病院主催) |
結婚して23年。小林さんの妻(51歳)が依存症になったのは、年子の娘たちが幼稚園に通い始めた18年程前から。8年前からは酒量が増え、家事もできなくなった。
「外に知られたくないと、家庭のなかで七転八倒の日々でした」と語る小林さんは、当時、大企業の営業担当で管理職。仕事を終えての酒のつきあいは恒例で、深夜帰宅すると妻は居間で酔いつぶれていることが多くなった。朝も起きられず、朝食が作れない。中学、高校に通う娘たちに起こされると、よれよれの状態で財布から弁当代わりのパン代を渡していた。
それまでの10年間、飲酒について注意もしなければ、口出しも一切しなかったという小林さんだが、家事の放棄は許せなかった。家に帰れば、「ふざけんな、バカやろう!もう、飲むな!」と怒る、怒鳴る、脅す、殴るの連続だった。
「困り果てても、親兄弟はもちろん、誰にも相談できなかった。ただ一人、妻の父親に注意してほしいと頼んだだけ。当時はだらしないから酒を飲む、人間性の問題だと思い込んでいました」
どうしようもなくなり助けを求めて電話した保健所で、「自助グループの存在」を知り、恐る恐る参加した自助グループで紹介されたのが専門医療機関。その病院に行った日、医師から「アルコール依存症が病気であることや対処法」を教えてもらい、帰宅して妻に「いままでの俺の対応の仕方は間違っていたよ」と初めて謝った。
「週に1度、自助グループに通い始め、仲間がいることを知って、肩の荷が大分おりました」
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