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マイクのイラストコリアンや中国人の名前は、日本語読みと母国語読みの両方ができますね。

  私は、中学の時、「中華人民共和国の指導者の名前を書け」というテストに、敢えて「けさわひがし」と書いたことがありました。正しくは「モォー・ツォー・トン」のはずなのに、日本人が勝手に「モウタクトウ」と呼んでいるだけだから「けさわひがし」も正解のはずだと主張して。教師と激論を交わし、最終的に正解にさせたことがある。

朴さんの写真 1975年には北九州市に住む牧師、故・崔昌華(チョエ・チャンホア)さんが、NHKに対して、名前を「サイ・ショウカ」と日本語読みにして呼んだのは人権を軽視するものだと、1円の損害賠償を求める「1円訴訟」を起こしました。このとき、NHK側は、名前を日本語読みにするのは日本社会の慣習であると主張。判決で崔さんの主張は認められませんでしたが、1984年の全斗渙・韓国大統領の来日をきっかけに、NHKでも韓国人の名前を韓国・朝鮮語の発音で表記するようになりました。

 本人が望んでないのに、勝手に日本語読みで呼ぶのは、上下関係を組み込ませ、自分の流儀を相手に押し付けることです。外国人の名前を正しく読まない日本社会は間違っていると思います。しかし、在日コリアンの場合は多様で、日本語読みを自分の名前としている人もいますから、呼び方が分からなかったら「何と呼んだらいいですか」と聞くべきですね。

マイクのイラスト率直に聞くことが失礼にあたるのでは、と変に遠慮するのがよくないのですね。

 そう。「何人であるということとは関係なく、同じ人間として生きていこう」ということと、「日韓の差異を認めていこう」ということの両方が大切だと思いますから。

 60〜70年代前半の人権教育は、「人間みな平等」が重視されました。その想定範囲は人間生活のごく僅かだったので、例えば週に1回とか月に1回とかの人権の時間に、担当教員が上から教えられたとおり、在日の子を指して、「○○さんが本名宣言する、言え」と。涙を流して告白させ、「○○さんが何で泣いているのか分かるか」とクラスに呼び掛けるといったものでした。「先生が泣かしたんだ」と心の中で思っても口に出せない。そんなことをさせられるくらいだったら、在日であることをずっと隠し続けたいという思いになる子が少なからずいたのも無理ありません。そういう教育が行われていた弊害が、日本人の「変な遠慮」を生んだのでしょう。

 70年代以降、「違いを分かり合おう」という考え方が、「人間みな同じ」の考え方を超えてきたので、在日が集まっているサークルに入って仲間と出会い、本名がナチュラルな形で言えるようになるという者も多かった。
 ところが、同窓会に行って、「俺、実は、本名の○○になったんだ」といくら言っても、かつての友だちは「そうか、△△良かったな」と通称名で呼び、年賀状を本名で出しても、通称名で返事が返ってくるというのが、現状でした。そういう日本人に、「今から人権教育するから、聞いてくれ」と言うのも、はっきり言って鬱陶しいわけです。

 在日コリアンが直面している課題は、多民族社会に転換途中である日本社会に突き付けられた課題です。身近に在日コリアンと接する機会があるなら、とりわけ名前の呼び方は率直に聞く。そして、歴史問題や在日外国人の人権問題など今行われている議論に耳を傾け、日本人自身が在日コリアンについて学習していってほしいと思います。

(06年2月取材 text:井上理津子 photo:徐善美)

朴 一(パク・イル) 1956年、兵庫県尼崎市生まれ。在日韓国人3世。商学博士(専攻は朝鮮半島の政治と経済、日韓・日朝関係論)。現在、大阪市立大学大学院経済学研究科教授。大阪市の外国籍住民施策有識者会議や神戸市の人権教育・啓発懇談会の各委員を務める傍ら、TBS「サンデー・ジャポン」、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」他、多くのテレビ・ラジオ番組のコメンテーターとしても活躍している。『〈在日〉という生き方』(講談社選書メチエ)、『「在日コリアン」ってなんでんねん?』(講談社+α新書)、『朝鮮半島を見る眼』(藤原書店)、『まじめな反論『マンガ嫌韓流』のここがデタラメ』(コモンズ=共著)など著書多数。

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