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 年間の自殺者数が10年連続で3万人を越える日本。自殺大国ともいわれる異常事態にもかかわらず、これまで何ら自殺対策が実践されることはなかった。その難題に自ら当事者となって取り組もうと、NPO法人自殺対策支援センター「ライフリンク」を立ち上げたのが清水康之さんだ。「自殺に追い込まれる人を1人でも減らしたい」の一念で、2005年の「自殺対策基本法」成立に奔走。今年2008年4月には、初めて自殺の実態を克明に解き明かした「自殺実態白書」を発表した。自殺対策という「生きる支援」が、民間主導で具体化しようとしている。

自殺実態が解明されれば、自ずと対策は見えてくる ライフリンク 清水康之さん
                      

 自殺者が1日に90人、年間で3万人、自殺未遂者はその10倍ともいわれる状況が10年も続いている。しかし、負のイメージをもつ自殺は、これまで「ふれてはならない他人事」「自ら死を選択した個人の問題」として蓋をされてきた。突然、大きな悲しみを抱えることとなった遺族でさえ、事実をひた隠しにせざるを得ない風潮にあり、重荷を背負って残りの人生を歩まなければならないのが現状だった。志ある人たちで組織する「ライフリンク」は、自殺を社会の構造的な問題として捉え、その名のとおり「つながることで、いのちを守ろう」と、総合的なプランニングで新しい解決力を展開している。

自死遺児たちの願いを受け継いで
 私がライフリンクを立ち上げたのは、番組制作で出会った自死遺族の方々から託された思いや声を「対策」に活かしていくには、自分で行動するのがいちばん速いと思ったから。局内で番組を作っているだけでは難しいと感じました。遺児たちは当時、それまで前例のない、顔を出して遺族の体験を語るという彼らができ得る最大のことをしたわけで、それは取材者としての私を信頼してくれたからこそ。その勇気に応えるというか、正直、その結果がどうなっていくかに責任をもたなきゃいけないと思った。そうしないと自分自身でも納得できなかったんです。
 会社を離れても、社会の中の声なき声をちゃんと広く伝え、それをどう対策につなげるかという点では、問題意識は変わっていないつもりです。そもそもテレビディレクターをやろうと思ったきっかけが、「日本は経済大国と言われながら、なぜこんなに生き辛い、息苦しい社会なのか」を明らかにしたかった。その正体をちゃんと見てみたいという思いでした。その延長線上にあるのが、今のこの仕事かなと思っています。
 自殺問題については、取材したいと思ってるメディア関係者はたくさんいます。ただ、それができにくいのは、取材に応じてもらえる人がいないから。つなぎ役として動いてる人がいないんです。だから、自分がその役割をこなし、体験を話してくださる方をきちんとした形でメディア関係者に紹介すれば、メディアも積極的に伝えていくようになり、実務と啓発を効率的、効果的にやっていけるのではないかと考えました。

 発起人3人とともにライフリンクが設立されたのは2004年。ただちに総合的な視点のもと、パワフルで多彩な活動が始まった。05年5月には国会の議員会館で「自殺対策シンポジウム」を主催し、国に対して「自殺総合対策の実現に向けて」という5つの提言を行った。それまでの自殺対策に欠けていた社会全体での総合的な対策が不可欠という内容だ。それがきっかけとなって厚生労働委員会が「自殺総合対策」を緊急決議。翌年の06年5月には議員と連携し、10万人分の署名を集めて国会に提出。6月には自殺対策に関する初めての法律「自殺対策基本法」が成立した。その間にも、実務的な対策作りに欠かせない「自殺実態1000人調査」を開始。07年には自殺総合対策大網が閣議決定され、国や自治体に自殺対策の責務が課せられることとなった。

  自殺対策基本法が成立したことで、官民が連携して社会全体で自殺対策に取り組む枠組みはできました。じゃあ、何をやればいいのかを全国に啓発に行こうと始めたのが、07年7月から翌年3月まで行った「自死遺族支援全国キャラバン」です。全国47都道府県全てでシンポジウムを開催し、のべ80人の自死遺族が体験を語り、のべ1万2000人以上の方に来場いただきました。
 全国キャラバンの目的のひとつは、関係者の連携基盤を作ること。企画、開催までのプロセスで、我々が必要に応じて体験を語る方に参加いただくなどのコーディネートを行い、後は地域の問題として各都道府県で主催してもらったんです。地域の民間団体と共同で進めてもらうカタチで、それぞれの地域で官民の連携が生まれました。

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