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戦後60年と人権
子ども虐待
ネットと人権
子ども虐待ー子どもの権利、子どもの人権ー

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 かつて家庭裁判所の調査官として勤務していた楠本氏は、家庭裁判所について「外部機関と連携することは家庭裁判所の独立性や法律の適用に対してはマイナスであるという考え方がある」と指摘する。法律に従った厳格な解釈と判決こそが家庭裁判所の評価を高めることであり、一部には民間からの意見をとり入れて虐待を解決していく必要はない、という意見もある。
 「しかし専門領域だから完全というわけではありません。ましてや現代の虐待の問題は単一機関で解決できるほど単純なものではない。学問領域、医学、小児、心理、法律、ケースワーク、保健婦、学校・・・・これらの機関が専門性を高める中で連携してこそ、虐待問題に有効なものとなるのです。民間団体は、こうした官の限界を横断的につなぎ、支援していくことができます。関係機関を結ぶコネクターとしての役割を果たしていくでしょう」。
 もちろん、これは民間団体が専門機関の下請的な役割を担うということではない。
「民間団体は公の組織に比べると、できることは限られています。しかし私たちは地域と公共機関といっしょに予防のための活動をしたり、そうした中から発見した深刻なケースを専門の関係機関につないでいくこともできる。それが民間団体の持っている力で、公共機関にはできないことのひとつです。官だから勝っている、民間は劣るということではありません。機関の特性を認めあうことが大切なんです」。
 児童虐待防止協会は保健所と連携して地域の母親を集めてグループワークをスタートさせた。電話相談ではフォローできない母親の悩みを同じ地域に住む同世代の母親たちが話し合うという事業は大きな成果を得ている。相談電話の実績を、最も必要とされるかたちで専門機関と連携し地域に還元していった好事例といえるだろう。
 飛躍的に、とはいかなくても児童虐待防止協会のような民間団体と関係機関の連携は着実に進んでいる。そして、連携の中で生み出されている成果は大きい。守秘義務の問題や民間団体への財政的な支援等の課題も含めて、今後は官と民とどう組んでいくのだろう。「利用」でも「支配」でもない連携のとらえ直しが迫られている。
 また一方で民間機関、地域も子どもたちの問題を行政や専門機関に一任するのではなく、私たちの地域の子ども、町の子どもをどうやって守るのか、それぞれの知恵と技術を出し合って虐待を予防していく方法を考えなければならない。子どもの虐待はもはや家庭のみで解決できる問題ではない。

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