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戦後60年と人権
子ども虐待
ネットと人権
子ども虐待ー子どもの権利、子どもの人権ー

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 未来ある子どもの命が奪われる事件が相次いでいます。一般的に連想されがちな家庭内で保護者が子どもに暴力をふるう状態だけではなく、広い意味では、加害者の目的のために子どもが乱用されるすべての暴力をさす「子どもの虐待」。そうした予想もつかないさまざまな暴力に対処するために、子どもたちが自分の力で自分自身を守る力をつける暴力防止のプログラムが全国に広がっています。アメリカで考案された『子どもへの暴力防止プログラム』、略してCAP(キャップ)。子どもには安心して、自信をもって、自由に生きる権利があることを教え、子どもの内に秘めた力を引き出す人権教育プログラムです。

自分を大切にする心を学び、子ども自身の力をいかす
ワークショップの風景
子どもへの暴力防止プログラム/CAP

 日本では、ほんの数年前まで「子どもは無力だから、大人が守らなければいけない」という考えが主流だった。何か問題が起きるたびに取られるのは、「知らない人にはついていかない」「一人にならないようにしよう」といった防止策ばかり。そうして大人が管理するのではなく、人権教育を通して「自分を大切にする心」を教え、子どもにもできることがあるだという情報を与えて、子どもが持つ「内なる力」を引き出そうという(=エンパワメント)プログラムがCAPである。

 CAPとは、Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の略で、1978年アメリカで起きた女子小学生のレイプ事件をきっかけに考案されたもの。85年に森田ゆりさん(エンパワメントセンター主宰)によって日本に初めて紹介されたが、当初は子ども問題の専門家さえ暴力への関心は薄く、本格的な活動が始まったのは、プログラムを実施する「CAPスペシャリスト」の養成が始まった95年から。子どもの人権を守ろうという母親を中心とした一般の女性たちの活動で急速に広まった。

 

桝井喜洋子さん
桝井喜洋子さん

NPO法人「CAPセンター・JAPAN」の桝井喜洋子さんによれば、「阪神大震災以来、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の言葉とともに心の傷が問題視されるようになり、また、多発する子どもへの暴力犯罪や深刻化するいじめ問題に対し決定的な対策がなく、模索していた学校側や保護者にとって、これまでにない被害者の視点に立ったCAPが積極的に採用されるようになったのではないか」ということだ。当センターの調査では、現在、ワークショップを開く市民グループは全国で100を超え、受講者も2000年の1年間で子どもが約12万2000人に、大人が12万5000人と増加。授業に積極的に採用する学校や、補助事業の対象とする自治体も増えているそうだ。

「NO」「GO」「TELL」、自分の気持ちをはっきり伝えよう。

 CAPプログラムは子ども用(就学前、小学生、中学生、高校生向けの4種類)と大人用があり、共に、参加・体験しながら具体的に学べるワークショップ形式。
 たとえば、小学生向けのプログラムでは、3人のCAPスペシャリストが進行役となって70分のワークショップが始まる。
 まず、「今夜はご飯を食べさせないと言われたらどうなる?」などの日常的な質問から始まり、子どもたちの意見も聞きながら「権利は生きるうえで必要なものであり、中でも特別に大切な権利があること」が説明される。それが「安心」して「自信」をもって、「自由」に生きる3つの権利だ。次に、その権利を深く理解していくために、?いじめ、?誘拐、?性暴力の3つの被害にあった例を、寸劇でCAPスペシャリストが演じ、権利が奪われそうになったときに相手の権利を奪わずに自分を守る方法として、「NO(いやだと言う)」「GO(その場から逃げる)」「TELL(信頼できる大人に話す)」の3つの具体策があることが教えられる。

  1. 上級生から毎日カバンを持つよう強要される「いじめ」の例では、「一人で『いやだ』と言えないときは、友だちに打ち明けて手伝ってもらおう」と指導。
  2. 知らない人から「お母さんが交通事故にあった」と車に乗せられる「誘拐」の設定では、「知らない人に名前を言わない」「手を伸ばしても届かない距離をとる」「つかまれたら相手のすねをけり、足の甲を踏む」「助けを求めるときは『ウオー』と腹の底から特別の叫び声をあげる」などの安全のルールを学ぶ。
  3. 親戚のお兄さんに無理やりキスをされそうになる「性暴力」には、「その場から逃げること」や、「身近な大人に話すこと」が大事だと教えられる。
 さらに、その後は子どもたちも寸劇に参加して、「NO」「GO」「TELL」ができた友だちを助ける役を演じ、加害者や被害者の気持ちを味わいながら、権利とは何かを理解していくわけだ。

 3年前から始まった中高生向けの取り組みでは、暴力への対処法以上に、自分の気持ちを人に伝えたり、人の気持ちを聞くコミュニケーション法などを2日間に渡って学ぶ。特に日本の中高生は自分の気持ちを話すことが苦手であり、その気持ちや感情の表現が暴力と深い関係にあるからだ。構成的には、暴力とは体を傷つけるものだけではなく、心を傷つけるいじめやセクハラ、また、シンナーや過度のダイエットも自分への暴力だということを前提に、3つの権利が奪われたときの「NO」「GO」「TELL」の具体策をみんなで考えていく。小学生向けと比べ、具体例の設定内容も複雑になる。「女の子だけではなく、男の子が痴漢にあう場面」や「知っている人からの体罰」「親や仲間からの男らしさ・女らしさの押し付け」、高校生向けでは「デートレイプ(恋人間の性暴力)」なども加わり、話し合いながら気持ちや意見を述べ合っていくスタイル。

 受講した参加者の※感想からも、人権意識は確実に変化していくようだ。実際に、CAPセンター・JAPANには多くの※成功例が寄せられている。


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