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2002/03/15
企業と社会貢献


< 企業はどんな社会貢献活動をするの? >

企業が社会貢献活動を行う根拠をこれまで説明してきました。今や企業は積極的に社会貢献活動に取り組まなければならないことはいうまでもありません。経団連(経済団体連合会)も、その「企業行動憲章(1996年)」の第5章に「『良き企業市民』として、積極的に社会貢献活動を行う。」としています。

では具体的に、企業はどのような社会貢献活動をしているのでしょうか。実際には、各企業が、様ざまなアイデアによって多種多様な社会貢献活動を展開しているのですが、ここでは、二つの側面から分類することにします。

まず一つは、企業の社会貢献活動の方法による分類で、もう一つは、企業の社会貢献活動の分野による分類です。

(1) 企業の社会貢献活動の方法による分類

1991年に出版された、通産省(当時)関東通産局編の「地域貢献企業の時代」の中で、企業の社会貢献活動を、その類型から次の5種類に分けて説明しています。

1) 産業活動を通じた貢献
これは、企業が本来の目的である経済活動を進める中で、社会貢献活動も併せて行うものです。ある程度の経済活動効率を後退させても、社会貢献活動を優先する点が、社会貢献活動の原則である「無償性」が保つことになります。

企業が、部品・原材料等を地元で調達するといった場合や、企業が大学と共同研究を行うといった場合など、企業にとって、本来の流通経路の変更や企業秘密の公開により、企業にとってコスト増となっても、それが地域産業の振興や学生の育成に繋がるといった場合がこれに該当すると思われます。

2) 資金提供を通じた貢献
企業の社会貢献活動の中で、最も多いのがこの活動で、経団連の調査によると、1999年度の企業309社の社会貢献活動に支出した金額 1,246億円のうち、寄付金額は63.2%にあたる787億円になっています。

一口に社会貢献といっても、企業の担当者にとっては、本業以外は専門でなく、また、直接活動に参加することが難しいため、社会貢献活動を専門的に行っている団体等に資金を提供することにより、間接的な社会貢献活動を行っているのです。

アメリカでは、企業とともに、そこに働く従業員も同時に寄付をするという制度があります。1954年にGE(General Electric)社が行った「マッチング・ギフト制度」は、従業員個人が支出した社会貢献費用に、企業が一定金額を上乗せして支出する制度で、従業員の支出が増えれば、企業の支出も増えるという仕組みです。従業員が主体的に社会貢献活動に参加できる制度として、日本でも導入する企業が増えています。

このほか、企業組織とは別に、社会貢献活動を行う専門の組織である「企業財団」を設立することもあります。企業財団には、社会貢献活動を直接行うNPO(非営利組織)や、研究機関、文化・芸術活動を行う個人や団体への助成を行うものや、企業財団自ら社会貢献事業や文化・芸術事業などを行うもの、あるいは、その両方を行うものもあります。規模が大きくなるため、財団を設立するのは、どうしても大企業が多いようです。

3) 企業施設を通じた貢献
これは、企業が所有する施設を無償譲渡するというよりも、施設をある一定の期間無料開放するといった場合がほとんどです。企業は、グランド・野球場・体育館・ホールなど、文化・スポーツ施設を社員の福利厚生施設として所有しているところが多く、その施設を広く開放することで、文化・芸術・スポーツの振興に貢献しています。

また、工場や農場、工事現場などで、地域の住民や子どもたちのための見学会や学習会などを開催している企業もあります。

4) 人を通じての貢献
これには二通りの貢献方法があると考えられます。一つは、従業員に対し、社会貢献活動を「業務」として命令し、実施させることです。災害時の復旧活動への派遣や、社外講師の派遣、NPO団体等への出向はこれに該当します。また、先に掲げた工場見学会等に従業員が出勤する場合もこれに該当します。

もう一つは、従業員が個人として行う、ボランティア活動等の社会貢献活動に参加することを企業が支援することです。具体的には、ボランティアや青年海外協力隊に参加するための休暇制度や休職制度を設けたり、社内でボランティア活動の募集を行ったり、ボランティア活動に貢献した従業員への表彰制度を設けたりするといったことがあげられます。

5) 総合的な貢献
これまで上述した(2)~(4)までの社会貢献活動が組み合わされた活動のことを言います。例えば、企業が自主的に企画する社会貢献に関するイベントや行事、環境保全活動を行う場合には、企業は、資金・施設・人材を提供します。また、イベントのような短期の活動だけでなく、緑化活動や歴史施設・町並みの保全のような長期間の取り組みが必要な場合もあり、企業の総合的な支援が必要となります。

(2)企業の社会貢献活動の分野による分類

経団連が1990年より実施している「社会貢献活動実績調査」の中で、企業の社会貢献活動を、その分野から次の12種類に分けて説明しています。

分   野
貢  献  活  動  内  容
社会福祉 高齢者・障害者福祉団体への資金援助、ボランティア活動支援、等
健康・医学 難病等の研究への資金援助、交通安全指導、献血、物資援助、等
スポーツ 各種スポーツ大会への資金援助、スポーツ大会運営のボランティア、等
学術研究 研究機関への資金援助、大学等への寄付、等
教育 教育資金・物資援助、交換留学、コンクール、セミナー等の自主プログラムの実施、等
芸術・文化 公演・展覧会等の資金援助、コンクール、等
環境保全 環境問題の研究機関への資金援助、清掃活動、植林活動、等
史跡・伝統文化保存 文化財の保存・修復等への資金援助、伝統芸能の調査・研究への支援、等
地域社会活動 地域のイベント・祭り等への資金援助、地域行事へのボランティア参加、等
国際交流・協力 NGOへの支援、海外青少年の招聘、研修生の受入れ、文化交流、等
災害救援 赤十字等への義援金、マッチング・ギフト制度による募金・寄付、等
その他  

< 企業の社会貢献活動を見せて >

大阪同企連(大阪同和問題企業連絡会)に加盟している企業で、実際に行われている社会貢献活動の一部をご紹介しましょう。

・ 身体障害者に働く機会を提供
・ 新しい社会貢献制度-マッチングギフト
・ アジア諸国の人づくり支援-国際奨学財団
・ マングローブ植林チームへのボランティア参加
・ 障害者スポーツボランティアサークル部
・ 「視覚障害者の就労に向けたワープロ技能検定試験」支援
・ 骨髄ドナー休暇制度

< 企業の社会貢献活動のこれから >

先に企業が社会貢献活動を行わなければならない理由を、企業の社会的権力および社会的影響力に見合った社会的責任であるとし、その社会的責任をより基本的な責任に近づけ、企業に遂行させるのは、市民意識であると書きました。

わが国においても、市民意識は確実に高揚しています。ある調査によれば、71%の人が日本の将来に危機感を持っており、その結果として、社会問題の解決をすべて国家・行政に任せておく訳にはいかないという意識が生まれています。その一方で、総理府(当時)が毎年行っている「社会意識に関する世論調査」では、60%を超える人びとが、日頃社会の役に立ちたい、世の中の役に立つことが大きな喜びと考えており、その割合は年々増加してきています。この市民意識は、最近になって活発になっている、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)、ボランティア活動、市民オンブズマンなど、具体的な活動となって表れてきています。

市民意識が高揚したことにより、人びとの企業観も変わってきています。ある調査によると、「企業は誰のために存在するか」との質問に、54%の人が「社会一般のため」と答え、「従業員のため(55%)」とほぼ同数の結果となりました。そして、社会のために存在する企業は、社会的責任を果たすべきであるという意識が着実に高まってきています。

一方、企業の側も、こうした市民意識の高まりを受けて、さらに積極的に社会貢献活動に取り組むことになるでしょう。そして、将来的には、高い市民意識をもった従業員が増えることにより、これまで採り上げてきたことを行うことは、もはや社会貢献活動とは言えない「あたりまえ」のことになるかもしれません。

< おわりに >

企業に社会貢献活動を遂行させる原動力には、「市民意識」が必要と説明してきました。そして、その根底には、「人権尊重」の精神が不可欠であると思います。市民意識とは、個人が消費者・親・地域住民・納税者・労働者など、様ざまな主体の目を持って世の中(社会)を見、自分の意思を決定し、社会に参加していく意識のことですが、その「意思」の中には、誰もが平等に、幸せに生活できるよう、お互いを尊重するといった人権思想が採り入れられなければならないのです。

2000年12月、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が公布・施行され、今後、人権教育が積極的に行われるようになるものと期待されています。これにより、わたしたちの市民意識が、より一層人権尊重の立場で高まっていき、それに呼応して、企業も一層人権尊重の立場に立った社会貢献活動に、積極的に取り組むようになるのではないでしょうか。

制作・協力 大阪同和問題企業連絡会

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