福祉が充実すれば、人が育つ。人を大切にする心が育つ。 たとえば、働いている女性は360日の産後休暇がとれ、1年間は8.5割の給与が保証される。男性は全員出産に立ち会い、10日間の有休が取れます。私は、家にいた7ヵ月間は子どもを預けてスウェーデン語学校に通いましたが、費用は無料。高齢者用の長期療養型病院で看護婦として働き始めても教育休暇があるため、給料をもらいながら学校に行けました。国からは教育ローンも毎月出る。子どもには誕生とともに30万円の祝い金がおり、16歳まで毎年養育費も出る。しかも、医療費は18歳まで歯科矯正なども含め無料。教育費も大学まで無料です。これで一時は1.6にまで落ちた出生率が、もっともいい時期で※2.09まで回復しました。
さらに、労働ポイント制というシステムがあって、一つの職場に5年勤めると2年間の休暇がとれる。同じ職場に戻れる権利があるので、その間に留学する人もいれば、キャリアを積むために大学に行く人もいる。日本と違い、何歳になっても勉強できるシステムです。女性も20歳から64歳の9割が働いていて、結婚、出産しても学びたい人はいくらでも勉強できる。私が今も学問を続けられるのは、スウェーデン時代に備わった姿勢。通信教育で再挑戦した大学を45歳で卒業し、48歳で大学院修士を修了。現在も保健学の博士論文を執筆中です。 真のノーマライゼーションを目指して。 84年に帰国を決意をした理由は2つ。私が看護婦として精一杯働いても、スウェーデン人が最終的に選ぶのは、言語も微妙なニュアンスもストレートに通じるスウェーデン人の看護婦。異国の壁の限界を感じたここと、もうひとつは、スウェーデンで勉強したことを生かし、日本で看護教育を始めたいという思いからでした。 ※現在は経済の悪化で1.6に低下している
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