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障害者

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2002/12/27
自分の感情を大切にすることから、人の痛みへの共感も生まれる


政治をやりたいけど・・・

安積遊歩さん ずっと運動をしてきたけど、これからどうするか。最近、いつも悩んでます。宇宙(うみ)ちゃんが生まれる直前までは政治をやるということが必要なんじゃないかと思って動き始めてたんだけど・・・。いつも私の身体を心配してた母が死んだのは、ちょうどその頃。母は私に対して「身体を大事にしてほしい、無理しないで生きてほしい」という人だった。当時は月のうち半分も家にいないくらい動き回っていたから、「命をかけてまで政治家になってほしくない」と言われましたね。政治家どころか、市長から教育委員に任命したいと言われただけで右翼に悪口ビラをばら撒かれたなんて知ったら、なんて言われただろうねえ・・・。
もうひとつやりたいのが再評価カウンセリングを広めていくこと。とても革命的な理論だから、これを伝えるのも意味があると思う。ふたつともやっていきたいんだけど、両立は無理。だから政治家になるというのは誰かに任せて、私は再評価カウンセリングを伝えていこうか・・・とか、色々考えているところ。
それから、もうひとつ。娘といる時間を大切にしたい。ものすごく速いスピードで成長していくから、少しでも離れるのがもったいなくて。それに、私と同じ障害をもちながらも私とは違う人間関係をつくっていくためには、私の微妙なサポートが必要だろうと思うし。というのも、私の子ども時代は病院のモルモットのような状態であまりにもつらくて、世の中が敵だらけのように思えてしまったから。親だけじゃなく、よその親や大人たちを信頼していくことも大切だし、そんな信頼関係を築くのに私の経験が役立つかなと思う。
そして何より、娘が楽しげに遊んでいると、私のなかにいる「ちいさな子ども」が出てくるの。あまりのうらやましさに。それで一緒になって遊ぶんだけど、なかなかうまく遊べない。これがまた不思議で・・・。
親って、自分が苦しい子ども時代を過ごしたら、子どもにはそうじゃない人生をあげようと必死になるじゃない。でもいざ子どもが楽しそうにしていると、うらやましくてだんだん腹が立ってくるんですよね。こんな感情とつきあっていくのは大変だよ(笑)。

「助けて!」と言える人になろうよ

フィリピンの貧しい子どもたちへの奨学金援助プログラム「グループLINK」のソーシャルワーカー、メラニーさんと。安積さんはLINKの代表も務めている。
フィリピンの貧しい子どもたちへの奨学金援助プログラム「グループLINK」のソーシャルワーカー、メラニーさんと。安積さんはLINKの代表も務めている。

いずれにしても、人と人とが助け合う社会が必要だよね。障害をもつ私は、人を巻き込まざるを得ません。年金だ保険だといくらお金が出ても、人に頼むことを申し訳ないと思っていたら申請もできなくなる。実際にそういう親はいっぱいいるんですよ。でも本当は助けを求められる人が強いんだと思うよ。「つらい」「助けて」って言えないから、心が病気になったり、たばこやお酒におぼれたりするわけでしょう。助けてほしい時に「助けて!」って言えることが強くて賢いということじゃないかな。そう言えたら、人が「助けて!」と言った時に身体も心も動くしね。みんながそう言える社会をつくっていきたいよね。

2002年9月26日 自宅にてインタビュー

安積遊歩(あさか・ゆうほ)

1956年、福島県生まれ。生後約40日で骨形成不全症と診断される。1983年から半年間、アメリカのバークレー自立生活センターで研修を受け、ピア・カウンセリングを日本に紹介。障害をもつ人の自立をサポートする<CILくにたち援助為センター>やフィリピンの貧しい子どもたちへの奨学資金援助プログラム「グループLINK」の代表。再評価カウンセリングの日本におけるエリア・リーダー。著書に『癒しのセクシー・トリップ』『車イスからの宣戦布告』(ともに太郎次郎社)、『生の技法』(共著、藤原書店)、『女に選ばれる男たち・男社会を変える』(共著、太郎次郎社)ほか。

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