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2004/11/05
一人親家庭サポーター天野和昭さん 父子家庭になって見えてきたもの


一人親家庭サポーター、誕生

広島父子会に入って3年が過ぎた頃、メンバー間で「自分たちの子どもはだんだん手がかからなくなってきた。今まではボランティアや民生委員の人たちに手伝ってもらってきたけど、これからは自分たちが何かを社会に還元していこう」という話が出たんです。ぼくは、できれば父親が子育てをすることによって見えてきたことを伝える活動をしたいと考えました。ちょうどその時期に広島市がボランティア制度として「母子家庭・父子家庭援護相談員制度」(現在は廃止)と「父子家庭介護派遣人制度」をつくりました。援護相談員は、まさに子育ての相談員。母子家庭も対象ですが、母子家庭には「母子家庭相談員」がいますから実質の対象は父子家庭です。介護派遣人は、父親が残業などで遅くなる日に出向き、食事をつくって子どもの面倒をみます。父子家庭としてスタートしたばかりの家庭に、ぼくらがいろんなノウハウを伝えたり、心の支えになることができるかもしれないと考え、介護派遣人に応募しました。その後、中国新聞に育児エッセイを書くことになり、「広島市父子家庭・母子家庭介護派遣人」では長ったらしい上に意味がわかりにくいということで考えたのが「一人親家庭サポーター」という肩書きです。

 

あまりのも大きな夫婦間のの「ズレ」

天野さん写真 現在、天野さんは整体治療院を営みながら、初めて子どもをもつカップル向けの講座「パパママスクール」をはじめ、各地で夫婦や親子のコミュニケーションについて話す。介護派遣人のボランティアも継続中だ。「一人親家庭サポーター」を名乗って活動するうちに、離婚にまつわる相談を受けることも増えた。ほとんどが女性からの相談で、離婚を前提に「夫はどう出るか」「ひとりで生活するうえで注意することは」など、具体的な話が多い。一方、男性は妻との関係がうまくいっていなくても「こんなものだろう」と高を括っていたり、「離婚」という発想自体がないため、妻から離婚を切り出されて初めて「夫婦」や「結婚」を見つめ直すことになる。この「ズレ」にできるだけ早い時期に気づいてほしいというのが天野さんの願いであり、活動の原点でもある。

家に給料を入れていることで、夫や父親としての役割を果たしていると思っている男性は、いきなり妻から離婚を切り出されると大混乱に陥ります。「ずっと給料を家に入れていたのに、たいして悪いこともしていないのに、なんで?」と。そこで初めて、「結婚って何やろか」と考える。妻のほうは、ある意味、結婚当初から何年もかけて「結婚って何やろ」と考え続けてきた。友達ともお互いの話を聞きあったりして、「考え抜いた末の離婚」なんです。しかし夫は何年分もの「振り返り」をごく短い間にやらなければならない。どこかへ相談に行くという以前に、自分のなかで解決がつかないということがあるんじゃないでしょうか。「男がいるんじゃないか」と妻のバッグやタンスを探る人もいます。「何か見つかっても見つからなくても、自分が惨めなだけだから止めたほうがいい。それよりこれからのことを考えましょう」と言っても、止められない。実はぼくも同じことをして、ものすごく惨めな思いをした。理解できるからこそ同じことをさせたくないのに、人は痛い思いをしなければ納得できないんですね。ぼくは見守り、話を聞くことしかできない。子育てと同じだなあと思います。

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