----それは、女性の目だとか男性の目だからというのとは無関係? 人間のキャラクターの問題だと思います。 私は、彼女たちが股を大きく開いている時も、すごく体がやわらかいことを伝えるシーンとして撮りたいとも思ったんですが、カメラマンはやめよう、と。最近はカメラマンのほうが気をつかうようになってきています。 ----チアリーダーたちのユニフォームは、ミニスカート。ひとつ間違えると、ドキッとして見えかねない、ということがあるかもしれません。 高校側が最初に懸念されていたのは、その部分でした。チアは女の子がミニスカートをはいて足を上げて踊るものだと思われたら困る、と。 チアは男女とものスポーツで、男性の競技人口も増えてきています。私は、はじめ高校側がなぜそういうことを懸念されるのか理解できなかったのですが、大会を見て、なるほどと思いました。スポーツとしてがんばっている彼女たちを歪んで捉えようとする人たちがいかに多いか、ということを知ったので。チームの関係者や放送局関係などではなく、普通のビデオカメラを持った男の人たちがずいぶん見に来ていて、明らかに顔をはずして、下半身を撮っていたんですね。 同じ被写体を撮っても、カメラマンの意識と狙い方で全然違うものになる、と痛感しました。だから、そういう意味で、特にこういう映像を撮る時は、神経質すぎるくらいに気をつかわなければならないのだと思いました。 ----いろいろなことに慎重に取材を重ねられて、できあがった番組なんですね。 実は、取材中に、リーダーだった3年生が1人、交通事故で亡くなったんです。その事故が起きて、私自身、チームへの影響も考え取材を打ち切ろうということも検討しました。ところが、後輩の子たちが「先輩と一緒にがんばったことを放送してほしい」、遺族の方からも「娘が生きた証としてぜひ放送を」というお申し出があり、2カ月ほどのブランクを経て取材を再開、「天国への応援歌」というタイトルにしたという経緯もあります。
----反響はいかがでしたか? 春休み中の土曜日の午前中の放映だったので、チアの子たちと同世代の子たちからの「私もがんばろうと思いました」的なメッセージを期待していたのですが、中高生の保護者や教育現場にいる教員の人たちから「教材に使いたい」といった声が多く寄せられました。番組がよかったというより、私はチアの彼女たちの力だと思っています。著作権などの関係から、ビデオをお渡しできないのが心苦しいのですが。 その後、思いがけず「放送と女性ネットワークin関西」の賞をいただきました。私は会員でもなく、ジェンダーを意識して番組を作ったわけではなかったので驚きました。が、女性制作の番組の中から、幅広い視点が生かされていると評価された番組が選ばれる賞だと知り、大変にうれしかったです。 ----十河さんの番組のように、女性も好感度高く見ることのできる番組が増えていってほしいと願うのですが、視聴者として何かできることはないでしょうか。 視聴者センターが各局にありますから、ご覧になった番組のクレームや推奨も含め意見をどしどし寄せてください。各局とも、視聴者からの意見を真摯に受け止める傾向にあります。弊社でも、視聴者から届いた声が全社員に毎週配られます。
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