ふらっとNOW

ジェンダー

一覧ページへ

2005/06/24
思春期の子どもたちに「命」と「性」の大切さを伝えたい


●「卵子ちゃん」と「精子くん」の神秘のビンゴ

このあたりから、亀山さんの真剣さが生徒たちにぴしぴしと伝わりだしたのか、生徒たちはまんじりともせずに、亀山さんのほうを見つめるようになる。

「女の子は生理が始まったら、男の子は射精するようになったら、体は大人や。セックスしたら、女の子は妊娠する可能性がある、男の子は女の子を妊娠させる可能性があるということや」

「好きな異性ができて、つきあうようになる。と、好きな人の肌のぬくもりを感じたくなるのはいいことやし、セックスしたくなるのも普通のことや。それはアカンとは言わへん」

「ただ、セックスは早くしたからといってオシャレなものでもないし、カッコイイものでもないんやで。30歳、40歳を過ぎるまでしなくても恥ずかしくないもんなんやで」

ホワイトボードに、子宮の絵を描き、大量の「卵子ちゃん」が毎月生まれる。「精子くん」との出会いがなかった卵子ちゃんは、毎月生理となって体の外に出て、ナプキンに包まれてサニタリーボックスに捨てられる。射精で出てきた大量の精子くんも、そのほとんどはティッシュに包まれて捨てられるし、セックスで女の子の体内に入っても、大半は卵子ちゃんと出会うことなく、人間の形にならずに死んでいく。元気に生き残った精子くんだけが、何百、何千、何万分の1の可能性で、卵子ちゃんと出会って、ビンゴする。それが妊娠で、やがて人間の形になっていく「すごいこと」なのだ、と。

「みんな、お父さんの精子とお母さんの卵子が、ものすごく少ない確率をくぐりぬけて出会った中から、生まれてきた人間として、今ここにいるんやで。みんな、自分を好きになってください」

もしもリストカットしている子がいるんやったら、すぐにやめなさい。自分を傷つけることはやめなさい、自分で自分の命を守ってくださいの言葉に、熱がこもる。


●自分から「つける」男の子にならなアカン

「今もし妊娠したとしよう。狭き門をくぐりぬけて精子くんと卵子ちゃんがビンゴするのは、すごいことで、妊娠するのはすごい縁なんやで。でも、そしたら、あなたたちは今産めますか?『中学を1年休学して子ども生みます』『よかったね、おめでとう』となりますか。親も先生も友達も『でかしたぞ。ベビーベッド買ってあげよう』と言ってくれますか?」

「産めないでしょ。それやったら、セックスしても避妊しないとアカン。女の子は、セックスする時に、『(コンドームを)つけて』と言える子にならないとアカン。男の子は、女の子に言われなくても自分から『つける』と言う子にならないとアカン」

最後に、今の世の中、子どもたちもストレス多いだろうけど、自分の命は自分で守らないといけない、と締めくくった亀山さんに、生徒たちから大きな拍手が届いた。

「放っておけない性分なのよ」という亀山さんは、タレント活動と並行して、時間の許す限り請われた講演を受け、こんなふうな直球を投げている。
「1人でも2人でも、何かのときに『あ、昔、亀ちゃんがこんなこと言ってたなあ』と思い出してくれたらうれしい」

最近では、中高校生だけでなく、保護者会など大人のグループからの依頼も少なくない。そんな時は、必ずこう言うのだそうだ。
「小さいころは一緒にお風呂に入ったりして、文字どおり、子どもと“裸のつきあい”をしておくことが大切。大きくなっても、家でのごく普通の会話の中で、『生理』『セックス』など性に関する重要な話を、恥ずかしがらずにどんどんしていってほしい。それに、あなたは父と母から選ばれて生まれてきたのだということを分からせてあげてほしい」

(04年11月~12月、取材 text:井上理津子)
写真提供:神戸市立太山寺中学校

亀山房代(かめやま・ふさよ)タレント。1967年三重県生まれ。1989年11月に元「ザ・ぼんち」の里見まさととコンビを結成。1997年に上方お笑い大賞(読売テレビ)金賞、98年に上方漫才大賞(ラジオ大阪)大賞を受賞。30歳を過ぎた頃から、社会的・教育的な番組に活動の場を広げ、現在、NHK大阪放送局「ぐるっと関西おひるまえ」「中国語会話」の司会者として活躍する一方、10代の性教育などをテーマに各地で講演している。著書に「みみどしま」(ぱすてる書房)

12
関連キーワード:

一覧ページへ