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2004/09/10
イラク支援 本当に求められているもの


いろんな人が参加することで活動が豊かになる

・・・「迎える」とひと言で言っても、態勢を整えるのは大変だったのではないですか?

今振り返ると、「畑違い」だからこそできたと思います。いきなりピンポーンと病院を訪ねていって、「イラクの医師を勉強させてください。患者の面倒をみてください」と頼み、ビックリされました(笑)。一般的に、大学病院が外国人を受け入れる場合、国費の留学生か政府レベルの話があってのことで、一般市民のボランティアが申し込むなんてあり得ないと。
でも受け入れてもらえたんですよね。それは、多くの人がイラクの問題に心を痛め、「どこかで自分の力を使えないか」という思いを抱いていたからです。たとえば、「セイブ・イラクチルドレン名古屋」を立ち上げた時に、すぐ取材をしてくれた中日新聞の記者や、薬のことで協力してくれた「核戦争に反対する医師の会」や医師と患者を受け入れてくれた名大病院のお医者さんたち、そして何より資金をカンパしてくれた一般市民のみなさん。振り込み票のメモ欄には「何かしたいんだけど先頭に立って活動できる状況ではありません。カンパでせめてもの力を貸したい」と書いてくれる人がとても多いんですよ。

名大で治療を受けているアッバース君の写真
名大病院で白血病の治療を受けているアッバース君。表情はすっかり明るくなった。しかしイラクでは今も多くの子どもたちが十分な治療を受けられずに苦しんでいる

・・・研修中の医師や治療を受けている子どもの様子を教えてください。

今、2人のイラク人医師が研修を受けています。小児科医のモハメド医師は'04年8月に帰国しますが、血液内科のアサード医師は研修を延長する予定です。というのも、バスラに骨髄移植センターを立ち上げる計画があり、アサード医師にディレクターを任せたいということで、より高度な研修を受ける必要が出てきたからです。二人ともとても勉強熱心で、朝8時からぎっしりつまったスケジュールを着実に消化しています。日本で得た知識や情報をイラクで活かしたり広めたりしてもらえることを願っています。
白血病の治療を受けているアッバース君は、外出許可が出るほどにまで回復しました。イラクでの治療責任者で、バスラ大学医学部助教授のジャナン医師が'04年6月に来日した際、「栄養状態もよく、笑顔も見せてくれて、以前の彼とは別人のよう」と喜んでいました。


・・・「自分も何かで役立ちたい」と思っている人に向けて、メッセージをお願いします。

小野万里子さん こうした活動はいろいろな畑の人が加わると発想が豊かになるということを、今回つくづく実感しました。ということは、誰もがきっと役立てられる何かをもっていると思うんですね。
たとえば、イラクでは爆撃や病気によって障害を抱える人が増えています。けれども障害者施設はあっても、車がないために通えず、家にこもっている人がたくさんいます。何人か乗れるマイクロバスがあれば施設や学校に通えます。その先のプログラムとしては、日本で行われていることが参考になるかもしれない。つまり、マイクロバスを送ったり、福祉や教育に携わっている人のノウハウを伝えるという活動ができるのです。実際、アッバース君の主治医、ジャナン医師は来日の際に広島を訪れ、障害者の支援プログラムを見学して「とても参考になった」と喜んでいました。
また、イラクでは母体が被爆したことにより、全身を鱗に包まれたあかちゃんや、顔や手足のないあかちゃんが生まれることが珍しくありません。なんの障害ももたずに生まれてくる子は、4人のうち3人とも言われています。ですから、女性たちの間では、妊娠・出産に対する不安がとても高まっています。出産後のケアもまったくできていません。精神的ケアまではとても手が回らないのが現状なのです。ジャナン医師からは、「日本の専門家、特に女性に協力してもらえないか」とも言われています。
医療の分野ひとつとっても、実に多様な支援を求められています。そしてそれらの一つひとつがとても切実な問題です。支援のあり方を考える時、イラクの人たちの姿や生活を具体的に知り、人と人との交流のなかできめ細かなニーズ(求められているもの)を掘り起こすことが大切なんですね。関心を持ち続けること、自分の仕事や得意分野の視点で「できること」を考えてみてください。


・・・ありがとうございました。

2004年6月23日インタビュー

セイブ・イラクチルドレン・名古屋
466-0015
名古屋市昭和区御器所通3-18 エスティプラザ御器所4A(小野万里子法律事務所)
Tel:052-852-1336
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