全員がライバルという評価システム
同じようなケースはいくらでもある。連合では本人の意向を確認しつつ、ひとりでも入れる労働組合(連合ユニオン)に加入してもらったうえで、福井さんらスタッフも当事者として会社との交渉に臨む。総合対策室長の石黒博俊さん(59歳)は「ボランティアですよ」と笑うが、社会的意義を感じたうえでの活動である。労働者の権利を守る運動を長年やってきた石黒さんや福井さんから見れば、労働者を取り巻く状況は悪くなる一方だという。「昔は解雇を“首切り”と言って経営者にも後ろめたさがあった。しかし今はリストラと片仮名になって大手が率先してやる。社会的に公認されてしまって、どんな会社も大手を振って解雇している」と石黒さんが言えば、福井さんは「首切り自由という風潮があると、働いている人たちは“自分だけはリストラされたくない”と思うあまり、足を引っ張り合うということもある。現に今、清掃をしている人から“会社の備品を持って帰る”というような噂を同僚に流されたという相談がきていますが、会社が悪いわけではないからこちらとしては対応しにくい。だけど社員同士を競争させて業績を上げるという大手のやり方がこういう形で広く浸透しているんですよ。働いている者同士が手をつなぐのではなく、全員がライバルになる。そこで勝ち抜かなくてはいけないという仕組みが作られつつありますが、長い目で見てそれが本当に企業や社会にとっていいことなのかどうかを考えなくてはいけないと思います」と話す。 まず自分が動かなければ何も変わらない
一方、働く側にまったく問題がないわけではない。石黒さんは苦笑しながら話す。「気楽な人がいるんですよ。“こんなことがあるから、何とかしてくれ”と言ってくる。自分は何もしない」。組合をつくることを勧めても会社につぶされると決めてかかり、名前を知られると職場にいられなくなるから絶対に出してくれるなと念を押したうえで、「外から何とかしてくれ。労働基準局を動かしてくれないか」と頼む。「でもね、中の人間が動かなければ何も始まりませんよ。中の人が何とかしたいと動くからこそ外から応援もできるのであって、社員が誰も何にも言わないのに、外から働きかけられるわけがないじゃないですか。でもこんな“依頼”が今も3件きています」。 連合大阪なんでも相談センター:06-6949-1105 |