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7.公的書類などが生活上の性別と合わなくて困る

大阪府在住のFtMトランスジェンダーです。性同一性障害でずっと悩んできましたが、昨今はようやく望みの性別が板についてきました。この先も男性として生きていくのはまちがいないです。性別適合手術などは今はまだ検討段階ですが、当面の問題点として、公的書類の名前がモロに女の名前なのが、いろいろと不都合な場面が多く困っています。戸籍改名も考えていますが、親を説得するのに時間がかかりそうです。

公的書類の記載はたしかにトランスジェンダーにとって悩ましい問題です。
運転免許証や病院へ行くときの健康保険証、あるいは海外へ渡航する場合にはパスポートもかかわってきます。
性別そのものの変更は、現行法のもとでは特例法の要件を満たして適用を受けるしかありません。 一方、名前もまた重要な要素であることに変わりはありません。
生活の実態と名前からイメージされる性別がかけ離れていることで、周囲から奇異の目で見られたりすることによるトラブルも想像できるほか、本人自身が自分の名前が自分を表すものとして受け入れられないというアイデンティティの問題もあるでしょう。
戸籍改名は家庭裁判所に申請することで可能ですし、理由として性同一性障害であることも近年は認められています。診断書があれば確実性は増します。
診断書がなくても通称名の永年使用の実績があれば許可されるのが通例なので、その場合は、消印入りの通称名宛の郵便物を集めておいたり、公共料金の契約を通称名でおこなっておくなどの方策が一般的には勧められています。
ただ、何かの事情で戸籍改名までは踏み切れないという場合には、次善の策として住民票のフリガナだけでも変更してみるという方法もあります。例えば「裕美」と書いて"ゆみ"と読んでいた女性が今後は男性として生活する場合なら、フリガナを"ひろはる"に変えるのです。具体的にはご自身の戸籍名との兼ね合いで知恵を絞ってもらわねばなりませんが、これなら市役所に届けを出すだけでできますし、読みがなが変わるだけでも、効果は相応に大きい物があります。

ちなみに運転免許証の更新や、パスポートの申請、あるいはそのための戸籍抄本や住民票などを取得しに行く市役所の窓口等々の職員は、それなりに事例に慣れており、昨今は性の多様性についての研修の機会もあるので、書類上のデータと見た目の性別が一致しない人がやって来ても、キチンと対応してくれます。公務員には守秘義務もあります。
健康保険証を持って訪れる医療機関の窓口も、過度の心配は無用という点で同様ではないでしょうか。