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子どもが統合失調症と診断された。治療法や治療期間は?

20代の子どもの様子がどうもおかしいので精神科を受診したところ、統合失調症と診断されました。どのようにすれば治るのでしょうか。治療には時間がかかるのでしょうか。

これまでとは違うお子さんの様子に心配されたことでしょう。受診されたことで治療への一歩が始まりましたね。
統合失調症は、昔は不治の病と考えられていましたが、世界中での長期的な研究から、現在では約70%は寛解状態(服薬などは続ける必要があるかもしれないが日常生活には支障のない状態)にまで回復するということがわかってきました。
しかし、慢性的な病ですので回復までには時間がかかることが多く、回復の時期に合わせてさまざまな治療方法を組み合わせていくことが大事です。主な治療方法は「薬物医療」「精神医療」「精神科リハビリテーション」の三つです。急性期にはまず幻覚・妄想などの症状をやわらげることが必要なので薬物医療法を中心とした治療を行ない、慢性期には社会参加に必要な生活上の捜能を回復させるためにリハビリテーションの役割が大きくなります。
焦らず、医師やケースワーカーなどとよく相談しながら、その時期に合った治療やリハビリテーションにじっくり取り組みましょう。精神病者の家族のための家族会や自助グループに参加し、同じ思いを共有する仲間づくりやお互いに助け合うネットワークづくりをするのもよいでしょう。

【解説】統合失調症
統合失調症(2002年に日本精神神経学会によって精神分裂病から病名を変更)は、10代後半から30代半ばで発病することが多く、一般に人口の約1%存在するといわれており、決してまれな病気ではない。症状は実にさまざまで個人差も大きく、一つの病気として考えること自体にも無理があるのではという議論もある。
原因についてはさまざまな仮説が挙げられてきたが、現在でも証明されていない。しかし親の育て方や環境だけで発病するのではないこと、遺伝病ではないこと、一つの原因によって発病するのではないことはわかっている。一般的には、その人が本来もっている体質的なもろさにストレスが加わり、バランスを崩して発症すると考えられている。その際にはドーパミンなど脳内にある神経伝達物質の代謝の変動も関係していると思われる。
症状には、陽性症状と陰性症状がある。陽性症状とは、人の声や電波、テレパシーなど、実在しない音が聞こえてくる「幻聴」、間違った考えを修正できなくなったり、被害を受けていると思いがちになる「妄想」などがあり、主に急性期に見られる。陰性症状とは、感情の動きが乏しくなったり、周囲に対して無関心になったり、意欲や集中力が低下することを指す。怠けているといった誤解を受ける地味な症状だが、急性期のあとの消耗期、回復期に見られる慢性の症状であることを理解し、長期的に見守ることが必要。無理な励ましは過剰なストレスをかけるし、手助けをしすぎると経験のチャンスが減り、回復が遅れかねない。その時々の病状を把握し、本人と時間をかけて話し合いながら、ほどよい助けと励ましで支えていくことが大切である。