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高齢者

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2000/06/22
住宅介護だって、介護は専門家に。



今まで私は、「税金を払ってるんだから、何とかしてくれ」と行政サービスは目一杯利用してきたし、人の助けも借りて、恵まれたケースでした。それでも、介護から解放されないというプレッシャーはいつもあったし、私の体は十二指腸潰瘍と胃潰瘍に、ぎっくり腰というおまけ付き。うちでさえこうなんだから、一般の家庭はどんなに大変か。もっと行政に「権利」の声をあげていくべきなのに、日本の女はおとなしすぎる。いまだに「うちは行政サービスなんか利用するほど落ちぶれていない」とか、「嫁は労働力なんだから、もっと使わなきゃ損」という考えの人がいるんですもの。一方の自治体だって、パンフレットにはまばゆいほどの老人福祉サービスを並べているのに、いざ利用するとなると、サービスが少なすぎるんですよ。

介護保険だって
「4月からは保険料をいただくのですから、自治体はサービスがないとは言えなくなります」なんて、介護保険推進派の有識者は言ってたけど、いざスタートしてみると、案の定、『介護の社会化』とは程遠い。私も介護が限界になって、特別養護老人ホームに申し込みに行ったら、400人待ちって言うのよ。これでは施設がないと言われたのと同じ。いきなり保険料を取って、少しずつ良くなっていきますからとは言うけれど、良くなる前に年寄りが死んじゃったら詐欺じゃない。保険料なんて、基盤がすべて整ってから取ればいいのよ。さらに情報公開や、オンブズマン制度を確立して、政治と行政が国民の信頼を取り戻さないと、みんなが安心して老後を迎えられる社会になんて、なりっこないんですから。

門野晴子(かどのはるこ)
ノンフィクション作家。
1937年東京生まれ。 1982年わが子の受験問題を描いた『わが家の思春記』(現代書館)を発表。以後、学校教育や老人介護などをテーマに執筆、講演活動を行っている。著書に『老親 を棄てられますか』(主婦の友社・講談社文庫)(2000年10月映画化。10月14日より岩波ホールで上映予定)、『寝たきり婆あ猛語録』『寝たきり婆あたちあがる』(以上講談社)(NHK連続テレビ小説「天うらら」の原案)、『ワガババ介護日誌』『切っても切れないワガババ介護』 (以上海竜社)『老いて、住む ―マンション暮らし奮戦記』(岩波書店)など。劇団朋友「わがババわがママ奮斗記」舞台化=主演長山藍子: 文化庁芸術祭大賞受賞。
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