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障害者

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2002/02/13
ユニークフェイス 「ふつうでない」顔で生きるということ


どこへ行っても見られ、聞かれ、励まされ・・・

「今回はあきらめましょう」
細田啓子さん 出産の翌日、夫を通じて医師から告げられた言葉を、細田啓子さん(35歳)は生涯忘れられないだろうと思う。生まれた赤ちゃんは顔全体と体の一部に赤アザ があったが、「頬ずりせずにはいられないほど」いとおしかった。初めて母親になっ た細田さんがショックを受けるのではという周囲の心配をよそに、むしろ「何があっても私が守ってみせる」という強い気持ちが湧いてきた。にもかかわらず、医師は暗 に「安楽死」を勧めてきたのだ。それに同調する親戚や、「おめでとう」の代わりに「次は普通の子を生んでね」という知人もいた。

マンガ「ふりかえる」 こうして細田さん夫婦の育児は波乱含みのスタートを切ったが、育児そのものは他の親たちと何ら変わりはない。日に日に成長する姿に胸躍らせ、かわいい仕草をカメ ラに収めては親となった喜びを夫と分かち合った。しかしベビーカーを押して町へ出ると、とたんに他の親子とは違う空気に包まれる。好奇の視線にとどまらず、「なん で火傷させたの?」「なんでこの子はこんなに赤いの?」と娘の目の前で詰問したり、いきなり細田さんを叱りつける人もいた。対する細田さんは、好奇心丸出しで娘 をじいっと見る人には抗議の気持ちを込めて睨み返し、無礼な質問には「生まれつきのアザなんです」と答えてきた。しかし徒労感が募るばかり。

「買い物に行っても公園に行っても、どこへ行っても同じことばかり聞かれる。なんで赤の他人であるこの人たちに説明しなくてはいけないんだろうって思うようになって」、子どもが2歳を過ぎた頃から、何を言われても無視するという態度を貫いている。今、娘は11歳。守ってやりたい気持ちは変わらないが、現実には親が立ち入れない部分がどんどん広がっている。電車のなかで「気持ち悪い」という声が聞こえてきた り、学校から泣き顔で帰ってきたりすると、切なさと無力感で胸がいっぱいになる。しかしだからといってことさらに強くなってほしいとは思わない。

「アザがあるんだから人よりがんばれとか強い子になれ、などと娘に言う気はありません。ほかの親御さんと同じように、のびのびと成長して好きな道を歩んでほしいと願うだけです」と細田さん。ところがそんな親の思いなどお構いなく、「アザに負け ないようがんばりなさい」などと娘を"叱咤激励"する教師がいたりする。アザがあろうとなかろうと、かけがえのない存在として子どもを愛し見守っていきたいという気持ちは、周囲の安易な思い込みに踏みにじられがちだ。

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