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障害者

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2004/08/06
「障害者の妻」という立場から見えてくるもの


「生糸の会」は癒しと学びの場

女性と道の写真 その後も光成さんが本を出版したりマスコミに取り上げられるごとに反響があり、メンバーが増えてきた。「今まで誰にも言えなかった」と苦しい胸のうちを明かしながら涙する人も多い。一方で、生活上の工夫やストレス発散法などの情報交換も活発だ。

光成さんはメンバーと話し合ううちに、「障害者を夫にもつ妻というのは、ふたつの役割を担わされている存在ではないか」と考えるようになった。「女性は男性に尽くして当然だ」という女性観と、「障害者は、まず家族(特に妻)が世話をするべきだ」という家族観に基づいたステレオタイプな役割意識である。疑問を感じたり異議を唱えたりすれば、「愛情がないのか」「屁理屈をこねる女」などといった非難や揶揄が飛んでくる。疑問を感じる自分を責める女性もいる。「介助は愛情だけでできるものではありません。家族介助を“愛情”の問題にすりかえず、社会的な問題として議論されるべきだと思います」と光成さん。「生糸の会」を、女性たちの癒しの場であると同時に、学びあい、社会へ自分たちの思いを発信していける場にしたいとメンバーたちと話し合っている。04年から大阪での定期懇談会も始まった。ゆくゆくは全国各地で懇談会が開かれるように、というのもメンバーたちの願いである。

「らしさ」を押しつける社会への問いかけ

視覚障害のある夫と暮らす女性が、こう発言した。「夫に“おまえに盲人の気持ちがわかるか”と言われたから、“あなたに晴眼者の気持ちがわかりますか? 私もあなたを理解したいと思うけど、私のことだってあなたに理解してほしいわ”と言い返したのよ」。堂々とした言葉に「すごい!」という声が挙がる。さらに「第二部」として、自閉症の子どもがいるメンバーが自閉症についてレクチャーした。閉会する頃には、誰もがリラックスし、笑顔になっていた。今後もお互いの気持ちを聞き合う時間を大切にしながら、さまざまな障害について学びあうことを予定している。

女性に対する「差別」「抑圧」は見えにくくなっている。しかし決してなくなったわけではない。「障害者の夫をもつ妻」と同じ根を持つつらさを、程度の差こそあれ多くの女性も日常生活のなかで感じているのではないだろうか。「妻なんだから」「母親なんだから」そして「女なんだから」と、「誰でもない自分」である前に押しつけられる役割。そしてそれは女性ばかりでなく、すべての人に「らしさ」を強制することにつながる。「生糸の会」からのメッセージは、私たちが知らず知らずに身につけている固定観念を問い直している。

本の紹介
『指先で紡ぐ愛 グチもケンカもトキメキも』
光成沢美著 講談社発行 1500円+税

※本の写真をクリックすると amazon のホームページから購入することができます。

生糸の会 障害のある夫をもつ妻のネットワーク
kiitonokai@yahoo.co.jp
手記集(2003年秋発行) 200円
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