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2005/05/20
子どもの「育ち」を阻害するもの、育むもの


「変われる力」を信じて育てる教育を

―――具体的にどのような支援が必要あるいは可能でしょうか。

やっぱり「人の力」ですね。こじれた親子の絆を結びなおすためには第三者が入ることが必要となるケースがあります。子どもが過ごす場所は家庭と学校なので、家庭がしんどい状況であれば、学校が「子どもの育つ場」としてとても重要な存在になります。不登校になったり、家のなかの問題をそのまま学校に持ち込んでトラブルを起こしたりもしますが、それはその子のサインなのですね。なんとかつながりを保って子どもに育ちの場を保障し、親の支援にまでつなげていきたい。学校はただ勉強を教えていればいいという時代ではなくなっていると思います。

―――家庭が果たせない役割を学校が担うということですね。教師の力だけでは無理な部分もありますね。

魚住さんイメージ写真 さまざまな役割の人が学校に入ることが必要ですね。大阪府では、「スクールサポーター」や「こころの教室相談員」「さわやかフレンド」といった名称で、カウンセラーや教職経験者、教職を目指す若い人などが学校に入り、子どもや親の相談を受けています。内容ややり方についてはもっと深めていく必要があると思います。
学校教育の枠内で育っていける子もいれば、それ以外の部分でのケアが必要な子もいます。心に問題を抱えている子にはカウンセリング的な関わりが必要ですし、それを行動化している子により高度な関わりが求められます。発達障害や精神疾患をもつ子がトラブルを起こしていることも少なくないのですが、医療的な視点がなければ対応を間違って症状を悪化させてしまいます。虐待や生活困難の問題を抱えている家庭には福祉的な関わりが必要です。心理、教育、医療、福祉と4つの視点をもっていなければ、子どもの問題を正しく見られない。子どもに関わる人は、私も含めて本当に勉強しなければなりません。

―――課題が山積ですが、ポイントは何でしょうか。

ひとつ言えるのは、問題の原因だけを追求しても逆効果だということです。これまでは問題が起こると原因を探し、追及やバッシングをするという流れがありましたが、叩くことでは人は変わりません。これからはしんどさを抱えた人を理解し、共存することを第一に考える時代だと思います。
すべての子どもには「変われる力」「育つ力」があります。その力がうまく発揮されるのは、その子を見守る人の意識が変わった時なのです。「教育」が、誰もがもっている本来の「力」を信じ育てる方向に向かってほしいと心から願っています。

―――ありがとうございました。

(2005年3月9日インタビュー text:社納葉子)


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魚住絹代著 大和出版発行 1500円+税
   
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