トラック一杯の否定材料
音楽を語るように政治を語ろうどんな雑誌を目指しているのだろうか。「創刊するにあたって、まず雑誌をたくさん買い込んで目を通してみました。すると、エンターテイメントに力を入れている若者向けの雑誌はいろいろあるのですが、若い人たちの意見を載せたり社会問題をきちんと発信しているオピニオン雑誌はないように感じました。そこで、ちょっと冒険ではあるけれど、ハードな記事も載せよう、音楽のことを語るように政治のことも語れる雑誌にしよう、と決めました」。創刊2号の投稿欄には早速、「この雑誌を読んだのをきっかけに、社会的な問題を考えていきたい」「働く母親に対するまなざしが冷たすぎる」「若者の就労問題をもっと取り上げて」という意見が並んだ。こうした声を積極的に記事づくりに取り上げていく予定である。 ホームレスはビジネスパートナー
IDカードを身につける理由また、全員が顔写真入りのID(身分証明)カードを身につける。身分証明書をつけて売るということに水越さん自身は抵抗も感じたが、「ビッグイシューの販売員であるという自覚をもってほしい」と踏み切った。創設者の言葉も心に響いた。「家も仕事もないということは、自分の存在を記録する場所がないということ。どこの誰であると名乗れないのはつらいことなんだよと言われたんですね。なるほどと思いました。だからビッグイシューの販売員であるということが、とりあえずのアイデンティティーになれば、と考えています」。さらに、編集部の連絡先が書いてあるIDカードは販売員自身を守るものでもある。今のところ大きなトラブルは起きていないが、現金をもった販売員が狙われることもあり得ない話ではない。「駅やオフィス街で売るというのはよく売れるというだけでなく、(常に大勢の人目にさらされている)彼ら自身の身を守るという側面もあるんです」という水越さんの言葉に、改めてホームレスの人たちの立場を思い知らされる。 |