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生活保護制度は私たちの「生きる権利」です 雨宮処凜さん

2013/05/02


「恥」「甘えるな」の意識が人を殺す

雨宮処凜さん

――権利という意識をもてないために、受給することに抵抗を感じる人も多いのではないでしょうか。

 いったん生活保護を受けるようになったら、一生抜け出せないみたいな誤ったイメージがありますね。それで「生保受けるぐらいなら死んだほうがマシだ」なんて言ってしまったり。一方で、受けている人の自殺率が高いのも事実です。生活保護を受けている20代の自殺率は、受けていない人に比べて7倍も高い。うつになる人もいて、いろいろなハードルを超えて生保を受けられたから一安心というわけではありません。やっぱり同世代がバリバリ働いて、恋愛や結婚もしてというなかで自分は生活保護を受けて先が見えないというのは厳しいものですよね。
 そういう現状を見ていると、「生活保護を受けるのを恥だと思わないことが問題だ」という政治家の発言がありましたが、「恥」だと思っていることでどれほどの人が自殺したり病んだり、あるいは受けることを拒否して餓死したりしているか。「恥」が人を殺していると思うので、一生のうち誰もが一度は使うぐらいの気軽なものにしていかないとダメだと思います。
 生活保護という名前もよくないですね。韓国にも生活保護という制度があったんですが、「国民基礎生活保障法」という名前に変え、制度内容も利用しやすくしました。

――「恥」もそうですが、「甘えるな」「甘えちゃいけない」という意識も強いと感じます。

 所持金がなくなってしまった人からのSOSを受けて出向いたりすると、「そんなことをしたらつけあげるばっかりだよ」「甘えさせたら本人のためにならない」と言う人がいます。でも多くはそこで誰かが関わらないと自殺していたケースです。じゃあ甘えずに自殺したほうがよかったのかということなんですね。
 今、ある程度健康な大人だったら1ミリも人に甘えるなという空気があって、すごく怖いです。でもよくよく考えてみたら、厳しい状況に陥った人ってもともと甘えられない環境なんです。家が貧しくて教育が受けられなかったり、非正規雇用ですぐ失業したり、甘えようにも甘えられないところをギリギリ生きてきた人がほとんどです。しっかり教育を受けて、正規雇用で、しかも専門職などで収入もある人は、自分の努力で今の立場を手に入れたと思っているかもしれませんが、生まれてきた環境や親の力などたくさんのことに恵まれてきたのではないでしょうか。そのことに気づかず、恵まれなかった人を「甘えている」「自己責任だ」と責める。「ない」ことがどういうことか想像もつかないんですね。
 支援する立場でいうと、甘えてくれるほうが楽なんですよ。あと1週間でお金がなくなるというぐらいで来てくれればいいんですが、ギリギリまで自分で何とかしようとがんばってしまう。連絡をくれた時には携帯が止まる寸前だったり今晩泊まるところもないという状態で、生活を立て直すのにかえって時間もお金もかかるんです。でも現場を知らない人は簡単に「ギリギリまで自分で何とかしろ、甘えるな」と言ってしまう。