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食品ロスを「生きる力」に活かす ふーどばんくOSAKA

2015/06/25


 生きる基本である「食」。食べることは、生きる力を育んでいく。しかし、飽食の国といわれる今の日本で、経済的な理由からお腹いっぱいご飯を食べられない子どもたちが増えているのが現状だ。その一方で、現在、国内で年間1700万トンの食品が廃棄され、その中には食べ物として十分、安全に食べられる「食品ロス」が、500~800万トンも含まれている。その食品ロスとなった食べ物と、食べ物に困っている人たちとの架け橋となっているのが「フードバンク活動」である。そうした活動を大阪でも、と立ち上げられたのが、NPO法人「ふーどばんくOSAKA」だ。開設から2年の現状を事務局、ボランティアのみなさんに伺った。

食品ロスを「生きる力」に活かす ふーどばんくOSAKA

食べ物のあふれる日本で増え続ける貧困
 日本の食料自給率は40%と先進国でも低水準だ。多くの食料を輸入に頼っているとはいえ、食べ物があふれる日本で、飢えに直面している人が増えていることは知られていない。これまで日本は平等で貧富の差が少ない国として捉えられてきた。しかし、現実は1980年頃から所得格差が拡大し始め、悪化しているのだ。相対的貧困率(等価可処分所得の中央値の半分未満の割合)が、初めて発表されたのは09年。その後、貧困率は上昇し続け、11年の数値は過去最悪の16%となり、およそ2000万人に相当する。その中でも母子家庭や高齢者、在日外国籍難民などの深刻な状況が報告されており、また、児童養護施設や障がい者支援施設などの福祉施設でも、福祉予算などの削減で厳しい運営を迫られている。

食べられるのに廃棄される食品が年間500〜800万トンも

――フードバンク活動は、発祥地のアメリカでは50年ほど続いている活動ですが、日本ではまだまだ知られていません。活動の内容から教えてください。

田原 フードバンク活動とは、文字通り「食料」の「銀行」を意味する社会福祉活動です。まだ安全に食べられるにもかかわらず、さまざまな理由で市場性を失って捨てられる食品、つまり「食品ロス」を食品関連企業から無償で引き取り、支援を必要とする人たちや福祉施設などにボランティアの手で配送し、無償で配布する活動です。

 日本では、2002年に東京都で初めてのフードバンク団体、NPO法人「セカンドハーベスト・ジャパン」がスタートし、03年には兵庫県芦屋市にNPO法人「フードバンク関西」が開設。その後、栃木、愛知、山梨など徐々に活動が広がり、NPO法人「ふーどばんくOSAKA」は13年に大阪府堺市の大阪食品流通センター内に開設しました。10年にはフードバンクの全国ネットワークが発足し、今は11団体が加盟しています。 

――食べられるのに廃棄される食品とは、どういったものですか?

田原さん

田原 2013年の農林水産省のデータによると、日本では年間に約1700万トンの食品廃棄物が排出されています。そのうち飼料や肥料として再生利用されるものもありますが、食品として安全に食べられるのに廃棄される「食品ロス」は、年間約500~800万トンも。この食品ロスは、世界全体の食料援助量の約2倍で、日本のコメ生産量に匹敵するといわれます。日本人1人あたりに換算すると、毎日おにぎり約1~2個を捨てていることになるそうです。

 そのうち私たちが取り扱うのは、商品のラベルやバーコードの印字ミスなど製造過程で生じた規格外品や、缶詰のへこみ、包装不備など流通過程で発生する商品、応募の締切りなどが印字された納期期限切れ、ひなあられなど季節商品の販売期限切れです。

 ふーどばんくOSAKAで扱う商品はさまざまですが、全体的には賞味期限がらみの商品が多く、加工食品の「3分の1ルール」で賞味期限が間近になり、店頭から返されたものや店頭には出せない食品を引き取っています。今、多いのは和泉市の大型量販店さんから賞味期限が当日のパン、野菜、果物などです。

加工食品の「3分の1ルール」とは?
 食品メーカーや卸、小売店が設定する商習慣のこと。加工食品の製造日から「賞味期限」までを3等分して、食品メーカーからの「納品期限」、店頭での「販売期限」を決めたものだ。たとえば、食品の賞味期限が6ヵ月とすると、製造日から3分の1の2ヵ月で納品期限、その次の2ヵ月目で販売期限となり、残りの2ヵ月で賞味期限となる。メーカーは納品期限で卸や小売店からの返品・受取りを拒否でき、販売期限で小売から卸への返品、あるいは残りの賞味期限まで店頭で値引き販売される。このルールが食品ロス発生の要因とされる。

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