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【大阪府人権協会】優生思想から考える、命の選択と人権

2020/03/10


立命館大学生存学研究所 客員研究員/利光 恵子さん

命を切り分ける優生思想

優生思想とは人間の生命を「生きるに値するか、しないか」に切り分ける思想で、重大な人権侵害を起こしてきました。

まず、日本における優生思想の歴史的経緯についてご紹介します。

1940年、国民優生法が成立しました。悪質な遺伝性疾患の素質をもつ人の出生を抑え、国民全体の質をあげようという、優生思想そのものの法律でした。しかし戦中で「産めよ増やせよ」の時代であり、実際には強制的な不妊手術も含めて少なく、むしろ社会は中絶を禁止する形で進みました。

敗戦後、1948年に不良な子孫の出生防止と母性の生命健康の保護を目的に優生保護法が制定されます。人工妊娠中絶を条件付きで合法化する一方で、法律の第3条で遺伝性疾患やハンセン病の場合、本人と配偶者の同意による不妊手術の実施が、第4条では本人の同意がなくても、医師が必要と判断し、かつ公が設置する審査会の決定により、強制的な不妊手術が合法化されました。

さらに第12条では、遺伝性ではない精神病や知的障がい者についても、本人の同意がなくても保護義務者の同意で不妊手術ができるとしました。こうした強制的な条項ができ、実際にどんどん実行されたのです。第3条のように「同意による」とされた場合も、事実上は強制だったケースもたくさんあります。

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大阪府人権協会