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2007/10/18
改正雇用機会均等法について知ろう!


間接差別の禁止

合理的な理由なく、一方の性を差別的に取り扱う「直接差別」は、男女別定年制や女性結婚退職制が従来から禁止されてきた。しかし、一方の性を採用・登用しなくて済むように、その性の構成員が満たしにくい要件を定める等、形を変えた「間接差別」がまかり通っていた。

「間接差別に当たるかどうかは、要は、だれもが納得する合理的な理由があるかどうかがポイントです」

改正法では厚生労働省令により、(1)身長・体重・体力要件、(2)転勤要件、(3)転勤経験要件の3項目が間接差別に当たると定められ、禁止された。

(1)身長・体重・体力要件とは、募集・採用にあたり、一定の身長、体重、体力を要件とすることを指す。

Q6 「『より体力がある者のほうが望ましい』という見地から、当社では、乗務員募集にあたり、『身長160センチ以上、体重50キロ以上』が採用条件でしたが、解除されることになるのでしょうか」(運輸)

この要件は、典型的な間接差別である。「体力」を身長、体重で計ることに「合理性」は見当たらないためだ。「身長160センチ、体重50キロ」を上回る女性は少なくない。しかし、男性よりも女性に、下回る人が圧倒的に多いのが事実。たとえば、29キロの荷物を運搬する業務への求人に、「30キロの荷物運搬が出来る者」を採用条件にするといった、その業務の遂行に不必要な要件を課すことも禁止となった。

(2)転勤要件とは、総合職の募集・採用にあたり、転居を伴う転勤を伴う人事ローテーションを行うことが、特に必要でないにもかかわらず、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること等を指す。

Q7「全国に支店があるC社では、総合職社員は複数の地域の支店に必ず転勤することになるそうですが、採用に転勤要件が加えられているのは違法でしょうか」(就職活動中)

これも、完全な「間接差別」にあたり、「違法」だ。
間接差別の概念は、「一見、性に中立なように見える条件であっても、結果的にどちらか一方の性に偏りが生じ、不利益を与えるもの」のため、このケースは、「性別に関係なく総合職社員全員」に対しての要件であっても、結果的に男女の偏りが生じることが予想されるからである。

Q8「D社は、全国に支店がある会社ですが、現在のところ転居を伴う転勤は必ずしも必要ではないそうです。しかし、今後、地域による業務の違いが生じてきて、転居を伴う転勤が必要になるケースが発生してくると予測されるという理由で、採用に転勤要件が加えられ、内定するのは男子ばかりです。これも間接差別なのでは?」(就職活動中)

これも間接差別だ。転居を伴う転勤が合理的理由をもって明らかに必要になった以降ならともかく、必要でない時点で転勤要件を課すのは、合理性に欠けると判断される。

「今後の課題として残されたのは、雇用管理区分により、男女差が生じるケースです」
と、松井さんは補足する。

これまでの男女雇用機会均等法では、「雇用管理区分」(例えば、総合職コース、一般職コースや全国転勤コース、地域限定コースなど)が違えば、コース別雇用管理制度の中で、違った取り扱いをしてもよいということになっており、それが間接差別の温床になっていた。均等法が改正されるときに、連合などの労働団体はこの「雇用管理区分」そのものの削除を求めていたが、改正均等法の中にもコース別雇用管理の考え方は残っている。
厚生労働省は、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」という文書を出して、均等法違反にならないよう雇用管理をすることを求めているが、法的拘束力はないため、問題は残されていると考えている。

(3)転勤経験要件とは、昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること等を指す。

Q9「当社では、本社勤務者は、複数の支店での勤務経験が必要と判断されていますが、これは転勤経験要件の合理的事由にあたりますか」(金融)

ここでのポイントは、「本社勤務者」の業務が、本当に「複数の支店での勤務経験が必要」であるか否かの判断となる。だれもが納得する理由のある業務であれば問題はないが、そうでない場合は間接差別に該当する。

「あらゆる間接差別は、賃金格差にもつながり、『賃金は仕事への対価』との考え方から、なくさなければならないのですが、今回の改正で3項目に限定されたのは残念。実態として女性が不利となるものが多く存在しており、今後に課題が残りました」

その他、「家族手当」「住宅手当」の支給を「世帯主」に限定している企業も、違法性が高い。

Q10「当社は、賃金体系の中に『妻扶養手当』があったので、『同じ仕事をこなしているのに、不公平だ』と言い続けた甲斐があって、92年に女性にも支給される『世帯手当』へと変わった。しかし、一方でそれは、未婚シングルの男女と既婚者との間に、賃金格差をつけることになり、その差は今も埋っていない。どうすれば良いのでしょうか」(出版関連、40代女性)

これには、先述と同様に「賃金は仕事への対価」であるという観点に立ち、「世帯手当」を男女ともからなくすべきだと、松井さんは言う。子どもを有する人に付ける扶養手当や住宅手当など「生活関連手当」も同様だ。最近は、そういった業務に関係のない手当を月例賃金に組み込ませるのではなく、子どもが誕生した時に「祝い金」としての支給に変わりつつあるという。

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