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取り組み「企業における人権研修の進め方」

2003/05/30


企業における人権研修の進め方(一つの参考モデル)

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 今回は、企業が取組む人権研修の形態・考え方の一つの事例をご紹介します。
一口に企業の人権研修といっても、社内で行う場合と社外の研修会へ参加する方法もあります。例えば場所、人数、形式、受講者の年代や経歴などに応じてどのような手法がもっとも効果的か? 事前に充分検討してから実施しないと、期待する効果は得られない場合もあります。

 

社外研修
・行政や人権NGO・NPO、実行委員会で行う研修会へ派遣する。
・講演会への参加という方式。人権博物館や記念館、研究所などを訪ねて展示物などで体感・実感する方法。人権週間、憲法週間などの記念行事としての展示・講演会へ派遣する方法などがあります。
社内研修

・内部講師が社内で行う方法と外部講師を招聘して社内で行う方法があります。
・社内でパネル展示を行うことも可能です。
・講演会、見学、フィールドワーク(自分で現地を歩いて自分の目で見て理解する)、参加型の研修(講師・ファシリテータと参加者が一緒に考えて研修会に参加する)、対話、資料・本での自習…等など、形態も様々です。企業の規模、形態、従業員が一斉に集まる事が出来るかどうか、年齢比、男女比なども効果的な形態に影響を与えます。

始めにテーマを決める

何よりも、何を勉強してもらうのか? テーマの設定が最初に検討すべき大事な項目です。これまで研修を受けてこなかった、人権問題を自分の問題として考えてこなかった人に対していきなり専門的な言葉を羅列しても研修効果はあがりません。逆も又同じです。

5W1Hを検討する

同じようにして、5W1Hの考えで誰が、誰に、いつ、どこで、どのようにして、どの程度教えるのが良いか。そして、企業がなぜ人権問題に取組むのかを企業トップの意思として明確に示す必要があります。
多様性を学び、人権尊重企業経営をすることは、今後の企業発展・存続の基礎的条件となりつつあります。これまで企業は品質管理、環境管理でISOの認証に取組んで来ました。2004年度には倫理・人権・環境・労働などを包括的に規定する「社会的責任」がISO規格として出来上がることが予定で進んでいます。人権問題は国内法の面でも取組みが進んでおり、2000年12月には「人権教育・啓発推進法」が成立・施行されました。不十分ながら差別の禁止を織り込んだ「人権擁護法案」も2002年度から上程、審議されています。

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 人権の世紀といわれた21世紀は言葉の通り、「人権を無視すると企業も、組織も、社会さえも存続できなくなっている」といえます。一元性で他の文化を否定するような考え方は極端な例かも知れませんが、近代化がもたらした「地球の狭さ」は多文化、多民族がお互いを認めつつ共生して行くしか人類の平和的な存続がありえないことを示しています。

実は人権問題の学習は楽しいのです。これまで固定観念として誰もが信じてきたことが「おかしいな?」と思えるようになってきます。
まず、勉強して考えてみましょう! せっかくの一度の人生を楽しくて、実り多い人生にしてくれる。人権学習はそんな学習です。さあ! 始めましょう。

本文に向けて

人権問題に対して企業の立場で取組んでいる組織が各地に結成されています。公正採用選考人権啓発推進員制度(厚生労働省主管)から生まれている組織があります。より積極的に人権問題に取組み、同和問題を始めとする様々な人権問題の解決の為に結集している企業の連絡会組織も全国各地の都府県に又市町村に出来つつあります。以下の「企業の人権研修への取組みモデル」は、大阪同和問題企業連絡会の啓発・情報委員会を中心にまとめた一つのモデルです。はじめにも言いましたように、個々の企業ではそれぞれ特徴・事情が異なります。モデルを参考にしながら、自社に合ったシステムを築いてください。
【ふらっと】を始め、企業組織・行政でも相談に乗る体制が出来つつあります。「人権教育・啓発推進法」が施行されており、人権研修は法に基づいて実施されるべき「法定研修」になっていくことでしょう。いち早く企業のシステムとして確立して行って下さい。

制作協力  大阪同和問題企業連絡会