介護を学校で教えるのは、水泳を通信教育で教えるようなもの
データは学会で発表できないけれども、一人の老人がどういう生き方をして、どういう死に方をして、それに自分はどう関わり、感じたかをできの悪い短編小説のようにケース報告はできる。介護は数字にしてその意味が出てくるとは思えないし、ケース報告の形しかないだろうと思うんです。これまでの近代科学の専門家とはちょっと違う。それはおそらく科学的育児なんてない「子育て」と同じだと思うんです。介護体験は学校じゃ教えられない。それじゃあ水泳を通信教育で教えるようなもんでしょう。 それに、どんな介護職でも大なり小なり哲学者になるっていうのが現場の面白いところ。「この人はボケちゃって生きている意味は何だろう」、「それに関わることの意味って何だろう」、「この人の一生は何だったんだろう」って。具体的な方法論も必要だけど、そうした思想、哲学も手に入れないとやっていけない。具体と抽象の2つの世界を往復する肺活量みたいまものが要る仕事なんですよ。よく言うんです。「介護って、こんな面白い仕事はない。何をすべきか自分で考え、生み出していかなきゃいけない想像力が必要とされる仕事。しかも給料をもらいながら、たくさんの老いの見本を見せてもらえる。自分の老い方の準備ができる素晴らしい仕事なんだ」ってね。
後半に続く
(2003年3月3日講演会場でインタビュー)
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