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高齢者

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2003/06/20
現場で手探りしながら、じいさんやばあさんを輝かせるもの


介護を学校で教えるのは、水泳を通信教育で教えるようなもの

三好春樹さん データは学会で発表できないけれども、一人の老人がどういう生き方をして、どういう死に方をして、それに自分はどう関わり、感じたかをできの悪い短編小説のようにケース報告はできる。介護は数字にしてその意味が出てくるとは思えないし、ケース報告の形しかないだろうと思うんです。これまでの近代科学の専門家とはちょっと違う。それはおそらく科学的育児なんてない「子育て」と同じだと思うんです。介護体験は学校じゃ教えられない。それじゃあ水泳を通信教育で教えるようなもんでしょう。
それに、どんな介護職でも大なり小なり哲学者になるっていうのが現場の面白いところ。「この人はボケちゃって生きている意味は何だろう」、「それに関わることの意味って何だろう」、「この人の一生は何だったんだろう」って。具体的な方法論も必要だけど、そうした思想、哲学も手に入れないとやっていけない。具体と抽象の2つの世界を往復する肺活量みたいまものが要る仕事なんですよ。よく言うんです。「介護って、こんな面白い仕事はない。何をすべきか自分で考え、生み出していかなきゃいけない想像力が必要とされる仕事。しかも給料をもらいながら、たくさんの老いの見本を見せてもらえる。自分の老い方の準備ができる素晴らしい仕事なんだ」ってね。

後半に続く

(2003年3月3日講演会場でインタビュー)

三好春樹(みよしはるき)

1950年広島県呉市生まれ。1974年から特別養護老人ホームに生活指導員として勤務。78年九州リハビリテーション大学に入学。卒業後再び特養に理学療法士として勤務。85年退職し「生活とリハビリ研究所」を設立。各地の通所訓練や在宅訪問に関与しながら、全国で「生活リハビリ講座」を開催。著書は『介護覚え書』(医学書院)、『専門バカにつける薬』『老いの見方、感じ方』(筒井書房)、『生活リハビリ講座シリーズ』(雲母書房)など多数。


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じいさん・ばあさんの愛しかた

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元気がでる介護術

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