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2003/12/26
ともに学び、考える「性」


全員参加のコンドーム実習

盛り上がった劇の後は、コンドーム装着の実習である。クラスごとに決められている男女混合の班ごとに分かれ、男性器の模型とコンドームが配られた。コンドームはひとりにつき1個用意されているので全員が練習できる。しかしなかなか「練習」は始まらない。ゼリーがついているコンドームに触れ、「気持ち悪い」と騒ぐ子。「先にやって」と人に押しつける子。ふてくされたような顔で黙り込んでいる子。反応はそれぞれだが、「照れくさい」という気持ちは共通しているように見える。しかし嫌がっている様子はない。
ひとしきりワイワイと騒ぎながら実習したところで模型とコンドームを回収し、終了。「るるくめいと」たちに贈られた拍手は力強かった。
貝塚第二中学では毎年、夏休み前に3年生を対象に性教育の授業を行っている。養護教諭の安岡誠子さん(43歳)は言う。「今日の具体的な話を現実的にとらえている子もいれば、まだピンときていない子もいるでしょう。でも近い将来、きっと必要になってくる話なので聞いておいてほしいんです」。2年前に「るるくめいと」の活動を知り、強い印象を受けた。「とにかくみんな元気! 大阪にこんなに元気な高校生がいるんやなあとすごく印象的でした」。今回の授業にあたって保健師から「“るるくめいと”さんに講演をお願いしてみては?」と提案され、「飛びついた」という。
「思ったとおり、反応が全然違ってましたね。やっぱり同じ話を聞くにしても、大人から聞くより年の近いお兄ちゃん・お姉ちゃんから聞くほうがいいんでしょう。気持ちへの届き方が違うみたい」。

男女一緒の実習に込められた思い

コンドームの実習を男女一緒に行ったのにも「思惑」がある。「今はよくわからなくても、男の子と女の子が同じ場面でコンドームについて話したり、触ったりしたという経験が大事なんじゃないでしょうか。異性との間でこういう機会がまったくないままできて、いきなりコンドームをつけるという話はやっぱりしづらいと思うんですね。その壁を低くしたい。いつかそういう場面になった時、コンドームのことを話せる人であってほしいと願っています」。コンドームを実際に使うということで、やはり「ちょっと早いのではないか」という保護者の意見もある。しかし学校としては「必要なことを教えておくのは大人の責任」という姿勢で、教師が協力しあって取り組んでいる。

「知る・考える・動く」が“るるく”の基本

「るるく」が誕生したのは1999年。「実効性のあるエイズ予防プログラムを行いたい」と考えた松原保健所の保健婦(当時)・飯沼恵子さんの提案を、社会との関わりを重視する教育に取り組んでいる松原高校が受け入れたのが始まりである。「正しい知識を知る、そして自分の問題として考える、それを自分でできる行動に移す」、つまり「知る・考える・動く」の最後の一文字をとって名付けられた「るるく」講座は、生徒の自主的な参加による。総合学科高校である松原高校には「産業社会と人間」という必修科目がある。これは職場体験を始めとするさまざまな社会体験や社会人講師による授業を通じて自身の生き方を考える、総合学科の基本科目だ。ここで取り上げられるテーマのひとつに「エイズ」があり、「るるく講座」を紹介するプリントも配られる。そこで関心をもった生徒が参加を申し込むという仕組みである。
講座の内容は、貝塚第二中学で彼女・彼たちが行ったものとほぼ同じ。クイズを通じてエイズの知識を学ぶ「クイズでエイズ」、ロールプレイによって性交渉に対する気持ちのもち方を考える「そのときあなたは」、模型を使ってコンドーム装着の練習をする「コンドームの達人」などなど。座学ではなく、自分の心と体を使って考えてほしいという願いがこめられた、オリジナルのプログラムである。

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