全員参加のコンドーム実習盛り上がった劇の後は、コンドーム装着の実習である。クラスごとに決められている男女混合の班ごとに分かれ、男性器の模型とコンドームが配られた。コンドームはひとりにつき1個用意されているので全員が練習できる。しかしなかなか「練習」は始まらない。ゼリーがついているコンドームに触れ、「気持ち悪い」と騒ぐ子。「先にやって」と人に押しつける子。ふてくされたような顔で黙り込んでいる子。反応はそれぞれだが、「照れくさい」という気持ちは共通しているように見える。しかし嫌がっている様子はない。 男女一緒の実習に込められた思いコンドームの実習を男女一緒に行ったのにも「思惑」がある。「今はよくわからなくても、男の子と女の子が同じ場面でコンドームについて話したり、触ったりしたという経験が大事なんじゃないでしょうか。異性との間でこういう機会がまったくないままできて、いきなりコンドームをつけるという話はやっぱりしづらいと思うんですね。その壁を低くしたい。いつかそういう場面になった時、コンドームのことを話せる人であってほしいと願っています」。コンドームを実際に使うということで、やはり「ちょっと早いのではないか」という保護者の意見もある。しかし学校としては「必要なことを教えておくのは大人の責任」という姿勢で、教師が協力しあって取り組んでいる。 「知る・考える・動く」が“るるく”の基本「るるく」が誕生したのは1999年。「実効性のあるエイズ予防プログラムを行いたい」と考えた松原保健所の保健婦(当時)・飯沼恵子さんの提案を、社会との関わりを重視する教育に取り組んでいる松原高校が受け入れたのが始まりである。「正しい知識を知る、そして自分の問題として考える、それを自分でできる行動に移す」、つまり「知る・考える・動く」の最後の一文字をとって名付けられた「るるく」講座は、生徒の自主的な参加による。総合学科高校である松原高校には「産業社会と人間」という必修科目がある。これは職場体験を始めとするさまざまな社会体験や社会人講師による授業を通じて自身の生き方を考える、総合学科の基本科目だ。ここで取り上げられるテーマのひとつに「エイズ」があり、「るるく講座」を紹介するプリントも配られる。そこで関心をもった生徒が参加を申し込むという仕組みである。 |