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2003/12/26
ともに学び、考える「性」


人に伝える楽しさと難しさを実感

生徒たちの反応は、大人たちの期待以上だった。エイズという「大きな問題」をどこまで理解できるのかという不安や性に対する照れ、恥ずかしさは開放的でありながらリラックスできる雰囲気のなかで消えていく。終了証を受け取る頃には自覚と意欲が芽生えている。2年目にはさらに深く学ぶバージョンアップ講座「るるくあっぷ」が用意されている。「知る・考える」の後は、「動く」の番だというわけだ。文化祭では南アフリカのエイズ孤児への折鶴とカンパの呼びかけをし、12月1日にはエイズデーには学校や駅でレッドリボンを配る。そして学校内外での発表。存在が知られるにつれ、活動の場がどんどん広がってきた。「僕は営業担当ですと平野教諭は笑うが、生徒たち自身の意見やアイディアも多い。
今回、貝塚第二中学で講演した「るるくめいと」は3期生の6人。全員が2年生である。基江利沙さんの「まず講座を受けてみた時、先輩たちが楽しそうにやってるのを見て、“私もあの中に入れたらいいな”と思った。実際にやってみると思った通り、やってる自分たちも楽しかった。“るるく”をやって、“セックス”“コンドーム”ってヘンに照れずに言えるようになったのもよかった」という言葉に、全員がうなづく。もしかすると、「セックス、コンドームと口に出せる」ことが「いい」とは思えない人がいるかもしれない。しかし自分の体を大切にする第一歩は、セックスやコンドームについて知識をもち、照れや羞恥心抜きに語れることではないだろうか。中川恵子さんの言葉。「楽しい反面、人に何かを伝えるのは難しいなあと思った。私個人として言いたいけどその場では言えないということもあるし。エイズのことも人との接し方も勉強していかないとあかんと思う」。なごやかな空気が一瞬ひきしまる。誰もが感じていることなのだろう。

自分で考えて決める過程を大切に

「もし、彼(彼女)と“セックスしようか”という話になったらどうする?」と聞いてみた。「好きやったらいいと思う。気持ちの問題。でもコンドームはつけるよ」というのは“黒一点”の小山くん。「うん、コンドームは基本やね。車に乗る時、シートベルトをするのと一緒」とすかさず同調する高松英理子さん。「あんまりセックスしたくない。やっぱりセックスってこどもを産むためにするんじゃないかなあ」と言うのは松本有加さん。これも17歳の実感なのだろう。基江さんは「つきあい始めの2、3ヶ月はセックスしたくない。もっとお互いのことを知ってからのほうがいい」と話してくれた。「そう言う女の子は多いなあ」と小山くん。高木ひとみさんは「同世代とこうして話し合うのも大事やけど、同じ年だからこそやりにくい時もある。親からもちょっと教えてもらえたらいいなあ」と話す。
平野教諭はこう話す。「自分で考えて自分で決める、その過程が一番大事だと思うんですよ。最初からこちらが方向性を決めて押し付けてしまうと、やる気もなくなるだろうし。僕たち大人は、生徒自身が自分で決めたり考えたりすることを時間的にも場所的にも尊重するということを意識しています。絶対に“こうしろ”とは言わない。これは“るるく講座”に限った話ではないと思います。大人はつい、“それは危ない”“こうしたらどうだ”と口をはさんでしまいがちですが、それが結局、自分たちで考える機会を失わせてしまっているんじゃないでしょうか」。
性教育で大切なのは、正しい知識を伝えると同時に、子どもを信頼し見守るという大人の姿勢ではないだろうか。「自分たちの話からエイズの知識やコンドームの大切さがどんどん広がっていくのがうれしい」と語る“るるくめいと”たちや、彼らの話を真剣に聞いていた中学生たちの姿が何よりもそれを物語っている。

 

 


本の紹介

るるくで行こう!新たな学びのスタイルで性と生を考えるピア・エデュケーション

るるくで行こう!
新たな学びのスタイルで性と生を考えるピア・エデュケーション

横田恵子 / 平野智之 / 菊地栄治 編著

学事出版 1,800円+消費税

※本の写真をクリックすると、amazonのホームページから本を購入することができます。

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